「でき過ぎでした。大変よくできました」と笑顔を見せるのは、2021年大会覇者の62歳、田村尚之だ。7バーディ・1ボギーの「66」をマークし、大会2勝目に向けて好発進を決めた。6アンダー・2位タイで2日目を迎える。今季は最終予選会41位の資格のため、出場できる試合が限られており、今大会も主催者推薦で出場している。
今年はここまで3試合に出場。この日の「66」は今季の自己ベストスコアとなった。好スコアを支えたのは、プロ転向後から絶大な信頼を寄せるグローバル治療院のサポートと、乱視の影響で右側が高く見えてしまう悩みを解消するため、昨年末から取り入れたエイムポイントだった。
今年の夏までは体調も良好だったが、9月の「コスモヘルスカップ 日本プロゴルフグランドシニア選手権」あたりから体の調子が悪くなったという。その後も「ずっと続いていた」ことから、前日のプロアマ終了後、治療院のある東京の目黒へ新幹線で向かった。
「背中が張りやすい。背中が黄色靭帯骨化症っていうのを持っている。ほぐしてもらわないと、硬くなりやすいんです」
実は前日、帰りの新幹線には遅延情報が出ていた。通常なら1時間ほどかけて施術を受けるところを30分で切り上げ、確実に三島へ戻れる新幹線に乗ったという。そこまでしてでも、田村にとって体のケアは欠かせないものなのだ。
2021年に今大会で優勝したときも、同じように東京へ足を運び、マッサージを受けていた。さらに「もっと言うと、10年以上前になるけど、富士フィルムシニアで勝ったときも品川に泊まって、治療院のマッサージに行って、富士フイルムの会場(千葉県)へ行っていました」と明かす。
ラウンド後の練習も、あまり行わないタイプだ。「パターだけくらいで、それより治療して、体を動かせるようにしたほうがいい」。ゴルフは体があってこそできるもの。思い描くスイングを実現するためにも、できる限りコンディションを整えて試合に臨むことを大切にしている。
そして、もう一つの好スコアの要因がパッティングだ。「パターが下手で有名」と自負する田村。その理由には、長年抱えてきた悩みがあった。「30年ぐらい前にレーシックをやっている。ちょっと乱視が出てきて、どうも右が高く見えてしまい、ずっとそれに悩まされていた。ラインは全部フックに見えるから、全部右に外していた」。
右側が高く見えることで、ラインを実際とは違う方向に読んでしまう。右に打ち出そうとするあまり、フェースの開閉も起きるなど、ストロークにも影響が出ていたという。
転機となったのは、今季の出場権をかけて争われる昨年の予選会、2次予選だった。田村の組についた研修生がキャディを務め、エイムポイントを使ってラインを読んでいた。その方法が自分に合っていると感じ、南九州にあるスタジオへ足を運んで学ぶことを決意した。思いがけない出会いが、長年の悩みを解消するきっかけとなった。
「(グリーン上の傾斜を)踏むほうが、目より感覚がいい。それで変な大きなミスが割と減った」。足裏で傾斜を感じ取ることで、ラインを読む精度が向上。パット数も良好になり、ストロークにもいい影響が表れた。
体のケアとパッティングの改善。積み重ねてきた準備が、今季自己ベストの「66」につながった。
この日もラウンド後は体のケアのために東京へ向かう。前日は信頼を寄せる「エース」の担当者が休みだったこともあり、目黒店で施術を受けたが、この日はエースがいる「麻布十番店」へ行くという。そして再び三島へ戻る。片道2時間弱をかけてでも、優勝を目指すためにコンディションを整える。
年齢を重ねても、自分の体と向き合い、課題を見つけて改善を重ねる。62歳の田村が戦い続けられる理由は、こうした地道な準備にあった。