2023年大会覇者の久保勝美が、9月30日に64歳の誕生日を迎えた。すれ違う選手からは「おめでとうございます」の言葉が贈られていた。
「もう64歳なんでね…」。そう切り出すと、これまでのゴルフ人生を振り返りながら、さまざまな思いやエピソードを語ってくれた。
久保は1990年5月にプロ転向。レギュラーツアーでは勝利を手にすることができなかったが、シニア入り後、52歳だった2015年の「金秀シニア 沖縄オープンゴルフトーナメント」で自身初優勝を挙げた。その後、2023年の今大会で8年ぶりとなるシニアツアー2勝目を飾った。
長くゴルフの舞台で戦い続けられている理由の一つに、周囲からの支えがある。「僕がここまで頑張ってこられたのは、僕が42年間いるゴルフ場(高根カントリー倶楽部)の方々、会員の人、色んな人が応援してくれること。それと、試合に来ては秋葉(真一)、田村(尚之)、清水(洋一)、崎山(武志)とか、そういう仲間が頑張っていると、それに引っ張られて、刺激をもらって頑張れている部分がある」。そう話す久保は、表情を緩ませた。
久保にとって今でも印象に残り、自身のゴルフにおける“意義”として受け取った言葉がある。それは、スポンサー契約を結ぶ三球電機の社長から、52歳のときにかけられた厳しい言葉だった。『お前、何でゴルフやってんだ?』。
久保がシニア入りした当時、なかなか賞金を稼げずにいた時期のことだという。それに対して久保は、「いや、それは賞金を獲稼ぐためにやっているんですよ」と回答。すると、「だからお前は稼げないんだ」と言われ、驚いたという。
「ゴルフというのは、アマチュアは自分の健康のため、趣味、楽しみでやっているんだ。プロゴルファーというのは、お客さんのため、応援してくれている人のため、スポンサーのため、みんなのためにゴルフをやっているんだ。お前は自分で金稼ぐためにやっているから稼げないんだ。周りの人の応援してくれる人のためにプロゴルファーというのは、やるものなんだ」
この言葉に、久保は素直に「あ、なるほど」と受け入れたという。それをきっかけに、ゴルフへ取り組む姿勢も変わった。例えば、「きょうは疲れちゃったな、もうやめようかな」と思っても、応援してくれる人の顔が浮かび、「もうちょっとやらなきゃな」と気持ちを切り替えて練習を続ける。
雨が降っても、気温が暑くて練習を断念しようとしてしまうときでも、「応援してくれる人がいると、やめられない。『もうちょっとやらないといけない』という気持ちにしてくれる」と久保。
そうした人たちの存在が、頑張る源になっている。「応援してくれる人のためにやってきて、コツコツやったのが、頑張れている理由かな」。
昔ほどの内容はできない。それでもトレーニングを惜しまず、いまでも一戦、一戦、勝ちにいく姿勢を持って挑んでいる。今週もそこは変わらない。大会2勝目に向けて、練習ラウンドやショット、パッティングなどの調整を入念に行う姿があった。
取材を受けていると、チームタイトリスト3兄弟の末っ子、清水が通りかかった。その際に「優勝宣言ですか!!」と満面の笑みで声をかけられると、「何言ってるんだ! 邪魔するな」と久保も笑いながら返す。二人の仲のよさがにじみ出る一幕だった。その後、先輩の渡辺司が通ると「70歳に向けての抱負?」と言われるなど、ほかにも多くの選手から声をかけられた。コースでは、“愛されキャラ”ぶりが存分に発揮されていた。
「こうやって仲間がいると『また頑張んなきゃ』っていう。みんなで『きょうどうだった?』っていう会話もあって、成績もみんなお互いに気にして、みんなにからいい刺激をもらって、頑張れます。僕が出て少し頑張れば、みんなにいい刺激になるかなと思って、去年そう思ったけど、なかなか厳しい。1年でも長く続けられるように頑張りたい。自分次第ですから、何かいいきっかけをつかむように、いま頑張ります」。
所属先のゴルフ場、スポンサー先の方々、応援してくれるファン、そして仲間たち。多くの人の存在が、久保のゴルフ人生を支えていることが伝わってくる。そんな話をする久保の表情は、感極まっているようにも見えた。その目はキラキラと輝いていた。60代でも負けられない。64歳としての初戦。これまで支えてくれた人たちへの感謝を胸に、3日間へ挑む。