「本当にうれしいですね。出場7回目にして、3回目の予選通過ができました」。
笑顔で語ったのは、ティーチングプロA級の渡邊達だ。ホールアウト直後の言葉には、長年積み重ねてきた努力が報われた喜びが込められていた。
渡邊は2016年の初出場以来、この大舞台に娘の碧さんをキャディとして帯同している。今回の予選通過も、親子で築いてきた信頼関係が大きな力となった。
今大会を迎えるにあたり、「予選通過」はもちろん目標だった。それでも結果ばかりを追い求めるのではなく、「自分が練習してきたことに集中する」と心に決めて挑んだ玄海だった。
「結果を意識し過ぎないようにしていました。これまで積み重ねてきたスイングの心掛け、その一打一打に集中した結果がこうなってくれました。本当に良かったです」とプレッシャーから解放され、柔和な笑みがこぼれ出す。
さらにラウンド中には、決定的な場面で娘の存在が光った。「正直、娘のライン読みに3回助けられました。ちょっと親バカですけど、本当に救ってもらいましたね」と感謝する。
第2ラウンド、2番ホール。セカンドショットは右バンカーからワンピンの距離に寄せたが、カップをすり抜け、難しいパーパットが残った。迷いがあったが、碧さんの「このくらいスライスする」という読みを信じて打つと、その通りカップイン。流れを切らさずプレーを続けられたという。
8番では130ヤードのセカンドを9番アイアンで抑えめに打ち、2メートルにつけてバーディ奪取。ここでもラインの判断を娘に委ね、その読み通りに沈められた。
さらに10番でも同伴競技者のパットを参考にしながらラインを読み切り、2つ目のバーディ奪取に成功。唯一のボギーとなった12番は、ティーショットを左バンカーに入れたのが原因だった。それでもアプローチで2メートルにつけたが「ラインを読めていたのに、自分が引っ掛けてしまいました」と反省。それでも次の13番パー3でバーディを奪い流れを引き戻した。
終盤は予選通過ラインが頭をよぎる中、「ちらちら考えました。でも、そのたびに練習してきたことだけに、意識を戻したんです」と17番あたりからは集中力をさらに高められた。気づけば最後まで自分のゴルフを貫き、予選ラウンドを完遂していたのだった。
今年の目標は年初に掲げた"日本グランドシニア"と"日本シニアオープン"への出場だった。そのために練習方法を見直し、食生活も改善。準備を重ねて、努力が実を結んでくれた。
渡邊はこれまで2010年日本ティーチングプロ選手権、2023年日本ティーチングプロシニア選手権を制覇。現在は埼玉県の鶴ヶ島・坂戸・川越エリアに位置するアーリーバードゴルフクラブ練習場の支配人として、日々レッスンとゴルフ普及活動に尽力している。
真面目で研究熱心な姿勢は、若き研修生時代から変わらない。還暦を迎えた今もなお、さらなる成長を求めてクラブを握り続けている。そして何より、その原動力となっているのが家族の支えでもある。「家族や練習場のみんなのサポートがあるからこそです。本当に感謝しかありません」と言葉をかみしめた。
決勝ラウンドでは、レギュラーツアーやシニアツアーで活躍してきたトッププロたちとの戦いが待っている。「誰と回っても自分よりレベルは上ですからね。胸を借りるつもりで頑張りたい」と実力を確かめる機会が巡ってきた。
娘との二人三脚でつかんだ決勝ラウンドへの切符。ゴルフ練習場支配人として、そしてティーチングプロとして多くのジュニアゴルファーやアマチュアゴルファーの模範となる存在でもある渡邊。その誠実な歩みを進める中で、残り2日間でどんな雄姿を見せてくれるのか。
予選通過を果たした2018年は45位、2024年は43位タイ。今年はその上の順位でフィニッシュを目指すだけだろう。
アーリーバードゴルフ練習場支配人が、シニアゴルファー日本一の決勝ラウンドへ駒を進めることに、やっぱり期待しかない。60歳、渡邊の挑戦は、ここからが本番でもある。