日本シニアオープン選手権は、60歳以上の選手が21名出場。中でも63歳・久保勝美は60歳以上の選手としては最高順位の15位で、堂々と決勝ラウンド進出を決めた。豪快な飛距離ではなく、経験と忍耐、そして誰にも負けない闘志を武器に戦うベテランは、「まずは予選通過が第一目標だったので、本当に良かった」と穏やかな笑顔を見せた。
実は久保、日本シニアオープンとの相性も悪くない。キャリアハイは2017年大会の7位タイ。それでも特筆すべきは安定感にある。これまで13回出場し、実に12回の予選通過を記録。日本一厳しいシニアメジャーともいわれる舞台で結果を残し続けてきた。
今大会の舞台となる玄海ゴルフクラブは、決してシニア選手に優しいセッティングではない。全長が長く、若い世代の飛距離が武器になるコースだ。「練習ラウンドに来た時は、とにかく長いし無理だなと思いました。でも試合になると違うんですよね。僕らはバンカーまで届かないホールもある。逆にそれがいい方向に働いて、フェアウェイからユーティリティで攻める形ができましたね」と振り返る。
さらに予想以上にグリーンが止まったことも追い風に。「グリーンが柔らかかったので、ユーティリティでもしっかり止まってくれた。本来ならショートアイアンじゃないと止まらないようなピンポジションでも攻められました。比較的回りやすかったです」と相好を崩した。
第2ラウンドのハイライトは終盤の12番からだ。173ヤードのセカンドショットを6番アイアンでピン奥2メートルにつけてバーディ。続く13番パー3では7番アイアンで左手前5メートルにつけると、上り下り傾斜に乗ったパットがそのままカップイン。連続バーディ。さらに最終ホールでは1メートルにつけてバーディ締めを見せ付けてくれた。
久保とって特にこの2日間、インコースでは全ホールでフェアウェイをキープし、「飛ばない分、フェアウェイから打つことを大事にしていました。インコースは上手くマネジメントできました」とすべてのホールでパーオンを達成。2日間ともインコースは3アンダーを叩き出している。
久保がシニアツアーのコマツオープンで8年ぶりの優勝を飾ったのが60歳の時。賞金ランキング8位に入り、逞しいシニアの顔として活躍を見せていた。一方で年齢との戦いは年々厳しさを増している。
「50代の頃は、60歳を超えた選手には負けないだろうと内心思っていました。でも自分が60代になってみると、パワーもスピードも50代にはかなわないんですよ」と現実をしっかり受け入れているからこそ、今の久保の強さがある。
飛距離が落ちた。今までにはなかったミスも増えた。だからこそパターを替え、グリップを見直し、握り方まで変えた。トレーニングを継続しながら、「今までと違う何か」を探し続けている。「できることをやるだけです。無理をしてケガをしても仕方がありませんから」と常に試合に向けて準備を整えている。
今年はコマツオープン、福岡シニア、ISPS HANDAなど後半戦の出場機会も控えている。シード維持は簡単ではないが、「またファイナルQTへ挑戦できる位置を目指したい」と現実的な目標を見据える。
「いつも言うことだけど、パワーもスピードも精度も若手には敵わない。でも唯一敵うとしたら、『根性』『忍耐』『諦めの悪さ』です」。ベテランシニアプロの見せ場は、寄せワンを拾い、苦しいパーパットをねじ込み、一打を積み重ねていく姿でもある。
「若い選手にはパワーで負ける。でも我慢のコースなら勝負できる。根性だけは負けたくないですね」。9月30日で64歳を迎える久保は、若手との力の差を誰よりも理解している。それでも諦めることなく、工夫を重ね、進化を続けるべテラン久保の挑戦はまだ続く。