ゴルフを学ぶ上で、「師匠」と呼べる存在がその後の競技人生に大きな影響を与えることは少なくない。
今年の最終プロテスト会場で見かけたオレンジ色のヘッドカバー。そのキャディバッグの持ち主である岡田大輔にとって、それは単なるヘッドカバーではなく、恩師との絆を象徴する特別な存在だった。
岡田にとって今年は6度目のプロテスト受験。昨年も同じ烏山城カントリークラブで最終プロテストに挑んだが、最終日に2、3打の余裕を持ってスタートしながらスコアを崩し、気付けばカットラインの下へ。結果はわずか1打足りず、不合格に終わった。
「去年は本当に悔しかったです。だから今年はこの大会だけを考えて練習してきました」と誓いを立てていた。
大学4年時には最終プロテストまで進出したものの、その後は2次予選敗退が続いた。卒業後は霞ヶ関カンツリー倶楽部に所属し、マスター室まわりの業務や練習場の受付、コース業務などをこなしながら腕を磨いてきた。
迎えた今年の最終プロテストの最終ラウンド。岡田に余裕はなかった。ただひたすらにリベンジだけを見据え、プレーに打ち込む日々の成果を出したかった。
序盤の2番ホールでは、ボールがバンカーの縁に刺さりアンプレアブルを宣言。それでも気迫でボギーにとどめる“ガッツボギー”でしのぐ。続く5番では1メートルほどのパーパットを外してボギーとしたが、直後の6番、7番で連続バーディを奪い、一気に流れを引き戻した。
後半は我慢の展開が続いたが、16番で4メートルのバーディパットを沈めると大きく前進。最終ラウンドを69でまとめ、通算イーブンパーで悲願のプロテスト合格を決めた。
合格後には、恩師である藤田寛之へ電話で報告。「これからもっと高い壁がある。でもまずはおめでとう」と祝福の言葉を掛けられたという。藤田はレギュラー18勝、シニア3勝を挙げている大ベテランのプロゴルファーとして知られている。
岡田のキャディバッグには、その藤田が契約スポンサーから提供を受けている「サトちゃん」のヘッドカバーが入っていて「藤田さんからお守りにと着けさせてもらって、一緒に烏山城を戦いました」といい、”サトちゃん”と共に合格を勝ち取ることができたのだった。
岡田と藤田の縁はジュニア時代までさかのぼる。オリンピックにも関わったトレーナーを通じて交流が生まれ、小学生の頃から練習やラウンドをともにする機会を得た。
「ジュニアの頃に練習を見てもらったり、一緒にラウンドさせてもらったりして、藤田プロには長くお世話になっています」と、憧れの存在でもある。
岡田は、藤田の背中を追うように専修大学へ進学。競技レベルの高い環境に身を置きながらゴルフへの理解を深めていき、プロの道を目指すようになっていった。
「藤田さんにも、両親にも本当に感謝しています」と6度のプロテスト挑戦は、少し遠回りだったが学びもたくさんあった。
昨年はあと1打に泣き、今年はその1打を乗り越えた。その先には、幼い頃から追い続けてきた憧れの背中がある。「昨年と同じ会場でリベンジできたことが本当にうれしいです」。
そんな"サトちゃん"は、岡田と共にゴルフでさまざまな体験を通じて、少し色褪せてお疲れの様子。「プロになったら、また新しいものをつけたい」と岡田は目を輝かせ、ラッキーチャーム的なオレンジ色のヘッドカバーに"感謝を忘れない"ことを誓った。