今季シニアツアー第15戦「ISPS Handa シニア・グランド・ゴールドクラシック~年は取っても、心とゴルフは若いんだ~」の最終ラウンドが森永高滝カントリー俱楽部(6,867ヤード/パー72)で11月16日に行われた。
最終ラウンドは首位とは3打差、4アンダー4位からスタートした崔虎星(チェ・ホソン52)が6バーディ・ボギーフリーとスコアを伸ばして通算10アンダーと一気に優勝争いへ。一方で連日首位の7アンダーからスタートしたタマヌーン・スリロット(56)は3つスコアを伸ばすに留まり10アンダーとし、ふたりはプレーオフで勝敗を決めることに。
18番パー5ホールで行われた1ホール目。スリロットのティーショットは、左のカートパスに当たり、転がった先にあるバンカーへ。バンカーからグリーン方向を狙うには、出球がバンカーのあごに当たりそうな嫌な位置。6番アイアンでフェード気味に打ち、なんとかフェアウェイ方向へ持っていくことに成功。3打目のアプローチショットはグリーンを捉えたが、2段グリーン下段へ流れてしまい10メートルの長い距離を残してしまう。
崔はティーショット、セカンドショットとフェアウェイに置く。3打目アプローチはグリーン上でスピンがかかり、ボールはピン方向へ転がり2メートルほどの近距離で止まった。
パッティング勝負でいよいよ決着へ。スリロットのロングパットはカップまで1メートルの距離まで寄せた。一方で崔のバーディパット・2メートルは、狙いを定めてしっかりとパターのストロークを出し、カップめがけてセンターから転がり入った。
崔の見事な逆転劇は、上り3ホールプラスプレーオフバーディを含む4連続バーディと強さを光らせた。昨年の日本シニアオープン完全優勝に次ぐ、シニア2勝目を挙げた。
優勝会見は、同組でプレーした先輩プロのI・J・ジャン(52)が崔の通訳として同席するという連携プレーで進行した。ジャンは韓国の同郷選手が日本の生活で困っていることがあると、それとなくサポートをしてくれる心強い先輩プロ。それに加えて今回は「同組で回っていましたからね、彼のゴルフ全部みてます、わかります」と笑い、日本語もプレー内容も理解した上で、崔の優勝会見に立ち会ってくれたのだ。
崔はこの試合で「トップ5に入ったらいい」と、優勝は意識していなかった。「最終ラウンドは前半の4番で4メートル、長いので7番で7メートルが入ったりしていましたが、後半はチャンスにつけたショートパットを何回かミスしたりして、短いのが入らなかった」とパッティングに苦戦。
しかし16番で4メートルのバーディを仕留めたのを皮切りに、17番パー3で15メートル、18番では10メートルがコロンとカップイン。「ロングパットが次々に入った」形で優勝争いに加わった。
「調子いい時はカップが大きく見えてくる。上がりの3ホールはカップが大きかった」と良い流れを掴んでいた。ゴルフは調子の波を見定めるのは難しく、好機をとらえるのは容易ではない。ベテランでさえ苦悩する。
プレーオフは「18番グリーンは重いし難しいからね、どうなるか。ただ、みんなも待っているし、早く終わらせたいという気持ちでした」と苦笑い。
2年連続で優勝を重ねられたことについては「嬉しいです。先輩方、選手のみなさま。シニアになっても体、元気でやれてます。友達、選手、シニアはみんな元気です。みなさま、本当にありがとうございます。ギャラリーのみなさま、本当にありがとうございます」と丁寧な日本語で、次々と感謝の気持ちを言葉で示した。
表彰式では、半田大会会長から崔にグリーンジャケットならぬ、日本流の“グリーン羽織”と”上杉謙信”兜が贈られた。「兜って重いねぇ」と笑い、初戴冠を喜んでいた様子。
半田会長は「ゴルフは独学というのは、彼の魅力でしょう。オリジナルスイングの個性は、ゴルフファンを楽しませてくれる。個性と明るさが人気の秘密ですね」と虎さんの方を向いて微笑んだ。
兜には「勝って兜の緒を締めよ」という武士道精神が込められており、勝者にだけ送られる素敵な日本の言葉でもある。崔の"諦めないプレー"と、"工夫されたスイング"はまさに「心とゴルフは若いんだ」という大会の副題にマッチする。
崔の優勝は、日本と韓国のゴルフ界に爽やかな架け橋をかけてくれたのだった。