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〈TCPグランドシニア選手権/FR〉 練習場支配人を務める高橋正博がプレーオフを制し完全優勝!グランド入りから3戦2勝と強さを示す

2025年11月08日
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「第14回PGAティーチングプログランドシニア選手権」は首位スタートの高橋正博(62)と小嶋光康(62)が通算1アンダーで並びプレーオフへ。1 ホール目で高橋がバーディパットを決めて優勝。優勝賞金50万円と日本プロゴルフゴールドシニア選手権大会出場資格、さらに優勝副賞として株式会社阪神交易より距離測定器Bushnel ピンシーカーXMジョルトが贈られた。高橋にとって2年ぶり2回目の優勝を飾った。

「去年と全く同じ風が吹いていた最終ラウンドで…」と高橋は記憶をたどった。2年前の大会ではグランドデビュー戦で4打差を着け圧勝。昨年の大会では連覇を狙って果敢にゲームに挑んでいたが、最終日にプレーオフにまで持ち込んだものの、宝力に優勝を譲ってしまった。

今年の最終ラウンドは首位でスタートし、一年前と同じ北西の風と4~5メートルの風速に、リベンジを誓う気持ちは高まっていった。高橋にとって学生から慣れ親しんでいる烏山城は攻略が頭に入っていることもあり、「風が吹いたら有利」という確信があった。

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ところが、本丸からスタートした前半2番パー3(151ヤード)で“信じられない”というティーショットミス。ボールをティーアップしてピッチングウェッジで狙いを定めたところ大ダフリ。ボールはグリーン方向に100ヤードほど近づいただけ。

「いやな症状がでた」と精神的に受けたダメージは大きく、スコアはダブルボギーと序盤から苦戦を強いられた。「今日はもうだめかも」いう思いにもかられた。

それでも前半は2つバーディを仕留めイーブンに戻した。ハーフのスコアチェックで2組前の小島光康(62)がスコアを3つ伸ばし、通算2アンダーで高橋と首位に並んだことを知る。「予想していなかった選手だった」と警戒を強めて後半へ。

12番パー4ではアゲンストの強い風にドライバーが右に流され、山の斜面にある木の根っこにくっついて止まっていた。8番アイアンで脱出を試みたところ、なんとグリーンオンに成功。ピン奥5メートルのバーディが入ってくれて「ラッキー」を喜んだ。

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しかしその後は11フィートの高速グリーンにスムーズなカップインとまではいかず、苦戦を強いられ2つボギーを重ねてしまう。最終18番(本丸9番)パー5に入ったところで、競技委員から小島と並んでいることを知らされた。だから気合も入れ直した。

ティーショットは「完璧だった」とフェアウェイを捉え、セカンドは残りユーティリティで刻み、残り60ヤードからのピン横2.5メートルに着けた。ここでバーディが決まれば優勝という場面だったが、フックラインに強風という難しい状況でタッチが弱まり、カップインならず。2年連続プレーオフ勝負へと持ち込んだ。

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三の丸1番(395ヤード)で行われたプレーオフ1ホール目。高橋のティーショットはフェアウェイ左にあるバンカーを越えたファーストカットへ。セカンドショットはピン手前5メートルほど。小島はピン奥7メートルからバーディトライをしたがわずかに外れてしまった。

一方で高橋のファーストパットは上りスライスラインをジャストタッチでカップイン。「ショートだけはするな」と自分に強く誓ったバーディパットで決着をつけ、念願だった大会2勝目を掴むことができた。

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昨年大会では最終18番ホールで1メートル、プレーオフでも1.5メートルのパッティングを決めきれずに敗北。一年後にリベンジを果たすことを誓い、パッティングにも準備を重ねてきた。

ところが前週に出場したティーチングプロシニア選手権では、調子もあがらないまま出場し、試合中に3パット、3パット、4パットと悪循環の流れを断ち切れず自滅。今回はその不安を解消しようと4本のパターを会場に持参し、最後までどのパターを選択するか悩みに悩んだ。練習仲間で後輩の中村安男から「だいたい(タッチが)弱いから、50センチくらいオーバーする気持ちで打ってくださいよ」とアドバイスもあり、それが勝負どころで思うような距離感を生み出してくれたのだ。

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高橋は日本大学ゴルフ部を卒業し、1990年にプロテストに合格。栃木県のゴルフ場で所属プロに就いたが、ゴルフ場の経営一新に伴い職場を失った。そこで「ゴルフで生活をするには、レッスンのスキルが必要になる」と2002年にティーチングプロ資格を取得。

埼玉県熊谷市にある「リバーサイドゴルフ練習場」に縁があって就職し、現在は支配人という立場で週末にはスクールも受け持ちながら、ゴルフの普及活動に全力を注いでいる。

「レッスンを受けに来ていただいている以上、その場しのぎのアドバイスはしない。時間かかってでも絶対に上手くなるようなレッスンを目指しています。だからいつでも本音。だめなところはだめと伝え、必ず上手くなってもらいたいという気持ちしかない。だから生徒さんはずっと信じてゴルフを続けてくれています」。

高橋はレッスンは丁寧に諦めずに向き合うことが大事だと力強く語り、生徒に寄り添っている。

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62歳という年齢は体力も低下し、体に不調も出てくるが「飛距離だけは落とさない」ということを常に心がけ、練習を続けている。「クラブを振る練習は、スクールでも使用しているトラックマン(弾道計測器)を使っています。飛距離に付随する数値を可視化しながら、距離を落とさないようにしています。それはゴルフではアドバンテージになりますから」と自信をのぞかせる。

その理由は、高橋が1984年に千葉で開催された「ゴルフ世界選手権」で、グレッグ・ノーマンの攻撃的なプレースタイルと圧倒的な飛距離に魅了された出会いにある。「すごい」と言わしめるスター選手のプレーには”大きな飛距離”があるのだ。だからこそ飛距離で魅せるスタイルは譲れないといい、今でもショットへの自信になっている。

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「同じ埼玉を活動拠点とするシニアツアーで頑張っている久保(勝美)さんはじめ先輩プロには、プレーオフで負けるなって言われそうだったから、こうして勝って喜んでもらえていたら嬉しい」と、一年越しのリベンジを果たせた達成感に、ようやくすっきりした表情が広がった。

「僕はトーナメントプレーヤーとしてプロ人生はスタートしていますが、今の仕事はティーチングプロでレッスン業が中心。熊谷の練習場で仕事をすると決めた20年以上前にツアープロは諦めています。試合にもあまり出られない日常ではありますが、一年に一度、この試合に出場することが楽しみのひとつです」と、大会に出場する動機は人によって異なるが、高橋にとっては特別な意味を持つ大会になっている。

これでグランドは3戦2勝と好成績を収めることに成功。一年後を見据え、高橋は新たな戦いに向けて動き出す。

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