最終ラウンドで伊藤正己(69)が73ストロークで回り、146ストローク通算2オーバーで大会初優勝を挙げた。優勝賞金30万円と来年の日本プロゴルフゴールドシニア選手権出場資格、さらに優勝副賞として株式会社阪神交易より距離測定器Bushnel ピンシーカーXMジョルトが贈られた。2打差2位には大野雅幸(75)、3位に水並茂(72)が入った。
最終ラウンドでは、伊藤と同組でプレーした水並茂(72)が「この年になっても伊藤さんと回れて本当に試合として楽しい一日だったし、勉強になりました」とホールアウト後、新チャンピオンに敬意を表した。
伊藤の強さは参加選手の中でも折り紙付き。それもそのはずで伊藤はこれまでティーチングプロ関連競技で”シニア”1勝(2022年)”グランドシニア”では3勝(2016年、2017年、2022年)しており、今回の”ゴールドシニア”では初出場で初優勝。ティーチングプロで5つのタイトルを獲得したことになる。
技術力だけでは勝てないのがゴルフ。伊藤は豊富な試合経験を持っていても「先週からショットがすっごい悪くて。でたら調子が悪くて。もうだめだーって思うくらい」と調子と気持ちが落ちていたというが「わけわからずやってますが、それも日々続けている”練習”のおかげだと思うよ」と改めて優勝に繋げられた要因を”練習”だと確信している。
最終ラウンドは風の強く吹く中、バックナインで苦しめられた。10番(二の丸1番)で、短いパーパットを外してボギーに。14番パー5のティーショットが左の山方向へ飛び、あわやロストという場面だったが、草の中でボールが見つかった。出すだけでヒヤリとする場面だったが、なんとかボギーでしのぎ切り、難所を乗り越えた。
15番から残りホールでチャンスは作れたものの、スコアは伸ばせず。最終18番ホールでは3メートル弱の下りパーパットをタッチを合わして流し込み、ほっと胸をなでおろした。
「風がとにかくすごかった。ドライバーが飛ぶ方じゃないのでね、苦しかったよ」といい「やっぱり勝負どころは上がり3ホールまでわからないし、どうやってしのぐかだね」と百戦錬磨の伊藤でも、痺れる一日になった。
来春に70歳を迎える伊藤は、今なお休むことなくゴルフに取り組み続けている。「古希なんだよ、もうすぐ。60の時にも歳のこと聞かれて嫌だったけど、もう70歳だとね、どうでもいいって割り切ってるところはある」と笑って受け流しているくらい、ゴルフに向き合う気持ちは、いつまで経ってもワクワクと心躍る。
「試合はなんでも出たい。連戦はもう無理だと弱気になったりしたけど、やっぱり出れば良かったなあとかいまだに後悔してる」と前向きだ。「シニアツアーを目指して、まだ予選会に残れるうちは挑戦するよ。ただ…最終(予選会)がね上にいけない。僕たちの年齢では距離が長すぎる。やっぱり75、76くらいしかスコアでない」と悔しがるが「でもね、出る。出続ける。実力がないと最終まで残れないということだから、胸張って最終までやりきりたい」と伊藤は静かに決意を示した。
心配なのは、試合に出場続けるための"体調管理"ということ。伊藤は「だいぶ痛んできたね。去年の暮に『頸椎症病神経根症』にかかり、自分の腕の重さに耐えられなくて痛みがでた」といい、首と腕に注射を数回打ち痛みも治まったが、いつ再発するかはわからない状態だ。
それに加えて健康、筋力維持のために週一でスイミングと、日常のウォーキングは欠かしていない。普段は所属する明智ゴルフクラブでショットの練習やメンバーさんとのラウンドレッスンに日々精を出している。「ゴルフ場ではすっかり最年長。だけどね、メンバーさんから声をかけていただけてるのは、本当にありがたい。みなさんゴルフに熱心だし、一緒にゴルフの上達を目指したいと思うし。素晴らしいゴルフ環境に感謝しています」と所属コースへの特別な思いを再確認した。
「やれる限りやる。今のところ目標は75歳までと思っていたりするけど、その時にまた考えよう(笑)。大先輩たちは80過ぎてもうやっているしね」と当面の目標は「やれるだけやる」ということ。「ティーチングプロのタイトル”5つ”取れたから、もういいかな」と笑い、念願のタイトルを獲得した表情には、達成感と確かな自信が浮かんでいた。