念願のゴールドシニアデビューを飾る72歳、松下利則がワクワクするときめきを胸に、大会初日を迎える。68歳の時にティーチングプロ会員としては最高齢というタイミングで入会し、40年間勤めていた”体育教師”から“ティーチングプロ”と転職を叶えた異色の経歴を持つ選手である。
「健康な体だし、ゴルフの腕も上達している今、ティーチングプロの受験に挑戦してみては」と恩師の大橋義幸プロに触発されて講習会を受講。口頭説明試験では頭が真っ白になりながらも、専門指導委員の先生方の熱心な指導もあり、合格するまで何度もシュミレーションテストを繰り返した。
2年という月日は必要だったが、ティーチングプロB級資格を獲得。現在は”ティーチングプロA級”という看板を掲げ、大阪府枚方にある「和幸カントリー俱楽部」でレッスン活動に邁進している。
さらに松下は70歳の時に「第14回ティーチングプロアワード最優秀賞」を受賞。テーマは得意分野の水泳から発想のアイデアを得た『「ゴルフ健康塾」〜スイムストレッチの驚きの飛距離効果〜』という内容で、スポーツの垣根を越えて水泳とコラボした着眼点とオリジナルのアイデアに高評価を得た形になった。
松下の水泳選手としての経験を生かし、”水泳のストローク”と”ゴルフスイングとの動き”に共通点を見いだした新発想でもあった。
現在も人気プロとしてレッスン活動に勤しむ毎日だが、わざわざ練習場にお越しいただくお客様には、「”アプローチショット”が大事ですよということを伝えるレッスンをしています。体重五分五分にかけてハンドファーストで打てっていうレッスンなんかまだあるじゃないですか。だけど自分の目線、自分の経験できちんとそのひとにあったセオリーを見つけてあげることと、A級講習会では力学的な学問アプローチを勉強したので、お客様への説明がちゃんと成立するんですよね」と指導の中で特に重視している内容を明かしてくれた。
今回のゴールドシニア選手権は、松下にとって大事なプロデビュー戦でもある。「脊柱管狭窄症の手術もして、なんとか痛みも治まり、ゴルフができるようになりました」と改めて健康に感謝する。「まずはここにくるという目標はクリアされたので、明日明後日のレベルをみて、そこに追いつけるように練習を続けて生きたい」。”松下先生”らしい堅実で真面目な構えでもある。
「今後はね、目指すところはこの大会で優勝したいですよ」と72歳の松下は夢を描きながら、ゴールドシニア"デビュー戦"に挑戦する。