最終ラウンドは雨と風、そして寒さも加わり厳しい条件の中で戦いが強いられた。1アンダー14位からスタートした高橋慧(27歳・フリー)が5バーディボギーフリーでゲームを進め、通算6アンダーとし、首位を走っている最終組の力丸勇気(45歳・GOLFSTUDIO〇)と竹中智哉(31歳・BERG)を捉えプレーオフ決戦へ。霧が立ち込める中で高橋が3メートルのバーディパットを丁寧に沈めて優勝を飾った。
高橋には優勝賞金100万円と、来年の日本プロゴルフ選手権大会の出場資格が付与された。また優勝副賞として阪神交易よりブッシュネル・ピンシーカープロXMジョルトが贈呈された。
高橋慧がPGAティーチングプロ選手権で日本一のタイトルを手にした。2018年にプロテスト合格。同期合格には阿久津未来也や篠優希といったツアーで活躍する選手がいる。高橋はこれまでレギュラートーナメントには9試合に出場し、2020年の日本オープンの9位が最高順位という成績を収めている。今年もロピアフジサンケイに主催者推薦で出場しているが予選落ち。それでもレギュラーツアー出場経験者として一目置かれた会員である。
高橋は最終ラウンドに向けて「ショットも悪くないから、後半までこの調子でいけたらチャンスがあるし、プレーオフまでもつれ込むことができる」と逆転優勝する自信があったという。前半は6番パー5のバーディ1つにとどまったが、後半は4つバーディを仕留めて勢いにのり66をマーク。優勝争いのメンバーに加わった。
プレーオフ1ホール目。ティーショットをフェアウェイセンターに置き「これでショットでチャンスにつけられる」と狙い通りのマネジメント。だんだんと霧が深くなっていく中で、ターゲットになるピンも見えにくくなったが、ピン方向をしっかりと打ち抜いて、ピン横3メートルに着けられた。竹中、力丸があと一歩という状況で、周囲が見守る中、高橋がストレートラインのウィニングパットを打ち切り、念願の優勝を飾ったのだった。
高橋はショートゲームの上手さには定評がある。日本プロアプローチ協会に登録し、技に磨きをかけてきた。2025年のショートゲームマッチポイントでは現在トップの座についていることからも「ショットでチャンスにつけられた」と自己評価し、勝利に結びつくゲームに自信をみなぎらせる。また右利きだが左右打ちのできる選手でもある。
コースに対する適応力は、レギュラーツアーやACNツアーの経験から培ってきた。先週、九州サーキットのひとつである「鹿児島オープン」が島津GCで行われ、優勝した坂本隆一が通算16アンダーで優勝しているのを知り「スコアの出るコースだからチャンスホールが多いということがわかっていた。だからマネジメントにメリハリを着け、チャンスを狙っていこう」と作戦を決行。雨風も気にならないほど集中力を高めて、最終ラウンドの大逆転につなげられた。
来週はクオリファイングトーナメントの挑戦が始まる。「セカンドステージからの挑戦ですが、今回のような悪条件の中でボギーフリーのゲームができたことは自信になります。やっぱりまだツアーに出場してシードを獲れる選手でいたい」と夢を追いかける。
その一方で、自分のゴルフを追い求めるだけでは生活はできないこともわかっている。先輩や仲間から「絶対にティーチングの資格は取っておいた方がいい」という薦めもあり、2023年にティーチングプロB級講習会を受講し、2024年にB級資格を取得している。それはレッスンもできるプロという周囲のお墨付きというだけでなく、「絶対レッスンの知識はあったほうがいい」と断言するほど、ゴルフの魅力を伝えるのに必要なスキルだからである。
「ツアープロにいきなり教わると、サンドウェッジからレッスンしたりすることがあるのですが、それは押しつけ。やっぱり9番アイアンから始めてもらうことや、クロックメソッドのようにスイングのイメージを伝えることがすごく大事。特に初心者のゴルファーにはてきめんに上達の効果があります」と実体験から学んでいる。
優勝賞金100万円と日本プロ出場権を手にした高橋は「昨年逆転負けをしたリベンジを果たすことができて嬉しい。ティーチングプロ選手権から日本プロに出場した選手は、未だ予選通過を果たせていないと聞いているので、そのジンクスは破りたいですね」と決意をにじませる。
そして「この大会に出場した選手の注目もあると思うし、しっかり頑張りたい」と口元を引き締め「だから応援よろしくお願いします」と言葉を弾ませた。
大会には一緒に出場していた後輩からウォーターシャワーの手荒い祝福にも「うれしいけど、ピーチソーダはさすがに甘かったなぁ」と笑う。鹿児島では後輩と連日通った「鳥夢」という定食屋のチキン南蛮や生姜焼き、どれも絶品で忘れられない思い出もできたという。「鹿児島、良かったです。絶対に勝とうという信念を貫き通して、プレーオフの負け越しもクリアできましたしね」。優勝トロフィーを掲げた高橋は、鹿児島での体験を通じ、またひとつ歩みを進めていく。