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シニアツアー

【ファンケルクラシック/FR】シニアツアーに巻き起こる“たまちゃん”旋風!タマヌーン・スリロットが賞金レースで宮本勝昌に肉薄し「来週抜いちゃうよ」

2025年10月19日
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宮本勝昌(52)の大会3連覇を阻んだのはタイからやってきた“たまちゃん”ことタマヌーン・スリロット(56)だった。

最終日はトータル8アンダーの単独トップからスタートするも「ドライバーが暴れて」なかなかスコアを伸ばすことができず、14番ホールでは1つ前の組で回る宮本と同じ最終組で回るプラヤド・マークセン(タイ・59)に3打のリードを許す展開。「その時点で絶対勝てないだろう」と諦め気味だったが、終盤の15番、17番、18番でバーディを奪って土壇場で追いつき、トータル10アンダーで並んだ宮本とマークセンと3人のプレーオフに突入した。

18番パー5の繰り返しで行われたプレーオフ。1ホール目は全員パーとして、続く2ホール目で宮本がグリーンを狙った2打目を右に曲げて崖下の10番に落とし、4オン・2パットのボギーで脱落。迎えた3ホール目、今度はマークセンの2打目が右のOBゾーンに消えてボギーとし、プレーオフ3ホールともパーとしたスリロットが9月の「日本シニアオープン」に続いて今季2勝目、シニア通算3勝目を挙げた。

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23年、24年大会を制していた宮本は3連覇ならず。プレーオフ2ホール目のセカンドショットのミスについては「残り235ヤードを5番ウッドで打ちました。ちょっとクラブが余っていたので緩みましたね」と振り返る。そして、「何事も負けるのは悔しいし、優勝以外はやっぱり…。今日は多分悔しい一日がもうちょっと続きそうですね。また次の試合もありますから、そこに向けて頑張ります」と前を向いた。

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そして、シニアツアー史上最多の24勝を挙げているマークセンは、「調子は良くて、ショットも良かったんですけど、最後のOBが残念で悔しいです。3番ウッドが良くなくて、最後も3番ウッドでOBでした」と話した。

トータル8アンダー・4位に兼本貴司(54)。トータル7アンダー5位タイグループにはI・J・ジャン(韓国・52)、古庄紀彦(51)、岩本高志(50)、髙橋竜彦(51)の4人が入っている。

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また、60歳以上に設定された『グランドシニア特別賞』(1位は150万円)は、99名が参加したチューズデートーナメントを勝ち上がり、8枠しかない本戦の出場権を掴んだ崎山武志が獲得。トータル1オーバーで迎えた最終18番パー5では、東聡と久保勝美がトータル2オーバーで先にホールアウトしたのが分かっていた。残り230ヤードであえて2オンを狙わず、「最後は確実にパーを取るために9番アイアン、9番アイアンで刻みました」と笑う。

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ツアーの出場権を持たない崎山にとっては今大会がシーズン最終戦で、「シニアツアーでのグランド賞は初なので、これをきっかけに自信持てるように練習して、予選会に臨みたい」と語った。

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今、シニアツアーでは“たまちゃん”旋風が巻き起こっている。今季は8戦に出場してトップ10を外したのは1度だけ。直近の5試合では、4位タイ、優勝、2位、5位、優勝と好調を維持。その強さの要因は「ドライバーの安定」と「パットの上手さ」にある。

ドライバーではドロー、アイアンではフェードを打っているスリロット。2年前までは曲がりの大きいドローが持ち球だったが「昔はフックもスライスもときどき出ていた。それでスイングを変えました」という。ドライバーではインサイド・アウトの軌道でボールを包み込むように打っていたのを、今はヘッドを真っすぐ出すようにした。それにより「曲がり幅が少なくなり、コントロールできるようになって、良い成績を残せています」と効果を実感する。

ドライバーの曲がりを抑えることで、飛距離も20ヤードアップ。現在のドライバーのキャリーは270~280ヤードで、ランを入れると290ヤード前後になる。ほとんどのパー5で2オンを狙えるためバーディチャンスが増加し、平均ストロークはトップの宮本の68.47に肉薄する68.48で2位に位置する。

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そして、スリロット最大のストロングポイントはパッティングだろう。平均パット数はただひとり1.6台の1.6741は、ツアー全体で断トツの数字だ。ちなみに2位の宮本は1.7170となっている。そのパッティングスタイルは独特で、上体をかがめるようにして重心を低くし、右肩を下げてハンドファーストに構えて打つ。「顔を起こさずに右目でカップを見ると、ラインが見えるんです。自然とハンドファーストになりました。それがずっと変わらない“たまちゃん”スタイルです」といたずらに笑う。

さらにパットのストロークでは、ほとんどフォローを出さずヘッドをボールにぶつけていく。「フォローは少しだけ。パンチ気味に打つ方がやさしいし、方向性も出ます」。ハンドファーストにぶつけていくと、ロフトが立ち過ぎて芝目の影響を受けそうだが、フェースもスタンスも少しオープンにすることでそれを緩和し、転がりを良くしている。

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今日の最終日は、アップダウンのある裾野カンツリー倶楽部を歩き続けた疲れで、改善したはずのドライバーの精度を欠いたが、15番ではグリーンエッジから5メートル、17番では二段グリーンの下の段から上の段のカップに打っていく15メートル、18番では下りの4メートルと、難しいラインを次々と沈めてプレーオフに持ち込み、「自分の特長であるパットが生きた」と胸を張る。

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この優勝により1400万円を加算し、賞金ランキングは3位から2位に浮上。トップの宮本とは約78万円まで迫った。日本シニアオープン優勝で今大会と同週に行われていた「日本オープン」の出場資格を得たが、「今年の目標は海外メジャーに行ける賞金ランキング4位以内なので、こちらを選択しました」と語る。

例年通りであれば、賞金ランキング4位以内に入ると、来年の「全米プロシニア」と「全米シニアオープン」の出場権が得られる。また、賞金ランキング10位以内の上位2名には来年の「全英シニアオープン」出場のチャンスも。このままの順位で終えれば、海外メジャー3試合に出場できる見込みだ。

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“たまちゃん”旋風で賞金ランキング4位どころか、賞金王の可能性まで見えてきた。これには「来週抜いちゃうよ!」と色気を出す。次週の「福岡シニアオープン」で連勝して、一気に賞金ランキングトップの座を狙う考えだ。そして、その翌週は大会連覇がかかる台湾でのシニア→日本シニアツアーで最終戦までの3連戦→タイでのシニアと、今大会から始まる7連戦を予定している。

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20代の若い選手でも音を上げそうだが、「夜は何もなければ8時か9時に寝て、朝も9時くらいまでは寝ていることもある。いくれでも寝られます」と、スリロットは長い睡眠時間で疲れを取っている。それに加えて、筋トレも日常的に行う。「ダンベルを使った筋トレを3日間やったら1日休んで、3日間やったら1日休んでという感じでやっています。日本に来たときはダンベルがないので、バックパックを使います」。ポロシャツから伸びる腕の筋肉は、とても56歳には見えない。

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大会期間中は「キャディの息子はラーメンが好きで、僕は唐揚げとチャーハンがタイ料理に近いのでよく頼んでいました」と、静岡のご当地中華『五味八珍』に毎日通っていた。ライ料理では定番のナンプラーに唐辛子が入った辛いソースを持ち歩いて料理にかけて食べる。最後は「アリガトウゴザイマス。ジャパン、ダイスキー!」と言って記者たちを笑わせた。

シーズンは残り4試合。タイからやってきた明るい笑顔の“たまちゃん”旋風は、まだまだ続きそうだ。

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