
かつて、パーシモンのドライバーで300ヤード以上飛ばし、“怪物”と呼ばれた川岸良兼(58)が、地元の石川県小松市で開催される「コマツオープン」に主催者推薦で出場する。「こうやって試合をしてもらえるだけでありがたいよ。賞金も高いしね」と、建設・鉱山機械などを製造し今大会を主催する『コマツ』に感謝の気持ちを述べる。賞金総額は7,000万円(優勝賞金1,500万円)で、シニアツアーでは「日本シニアオープン」の8,000万円(優勝賞金1,600万円)に次いで2番目に高い。
川岸は学生時代から頭角を現し、1988年の「日本アマチュアゴルフ選手権」など、アマチュアタイトルを総なめにしてきた。プロ入りしてからもレギュラーツアーで6勝を挙げている。今大会には毎年出場しており、これが9度目。2018年の単独2位が最高成績となる。地元大会とあって、北国新聞が連日のように川岸を取り上げたり、実家の練習場に通っていたお客さんたちも応援に駆けつける。

前日には開幕に先駆け、前年覇者の平塚哲二と水巻善典とともに、コマツがこれまでに製造してきた重機の展示や、超大型油圧ショベルをシミュレーションができる『こまつの杜』を見学。「小松製作所は昔から地元の大きい企業。『こまつの杜』には初めて行きましたけど、巨大な重機とか飾ってあって観る価値があると思います」。その後、同じメンバーで小松市役所を表敬訪問し、イオンモール新小松ではトークショーを行った。
地元大会をプレーでも盛り上げたいところだが、今年はシニアツアーの出場権はなく、これが2週前の「日本シニアオープン」に続いて2試合目。「一生懸命やるけど、あまり試合も出てないし、楽しく思い切っていくよ」と控えめに話す。同時に試合がないメリットも感じている。「アドレスするとじわじわ“さぶいぼ”が立ってくる」というアプローチイップスの症状が、「試合がずっと続くと直らないけど、試合に出てないから気楽」と、良くなってきている。

そして今は、大谷翔平が出る試合の中継を観ながら、じゅうたんの上でアプローチ練習するのが日課。「一日の行動を大谷翔平の野球の時間に合わせている(笑)。ただ(バッティングで)力の入ってないスッとした構えを見ているだけで、『スクワットしよう』ってなる(笑)。よく分からないけど俺もが張ろうと思うし、気持ちが前向きになっている。世の中に力を与えているし、俺ももらっている」。大谷の活躍が川岸の練習意欲を駆り立てているようだ。
川岸の練習ラウンド後に、今日のワイルドカードシリーズの初戦で、大谷が2本塁打を放って試合に勝ったことを伝えると、「2本打ったの!すごくない?意味が分からない」と興奮して喜ぶ。

そして、大谷の好きなところについては「周りに気遣いがある。ふとしたときに『ごめん、ごめん』みたいな人間性が出る。トップ中のトップの人間があんなこと普通はしない」と話す。58歳はプレーだけでなく人柄にも完全に惚れ込んでいる。“ユニコーン”と呼ばれる大谷の活躍をカンフル剤に、“怪物”川岸良兼は豪快なドライバーショットで地元大会を盛り上げにいく。
