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【日本プロシニア円谷HDウルトラマン杯/ FR】“劇的ウイニングショット”で大逆転優勝を飾ったサイモン・イエーツ 強さの秘密は経歴に隠されていた

2025年09月28日
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55歳のサイモン・イエーツ(スコットランド)が、最終18番で劇的な“ショット・イン・イーグル”を奪い2打差を逆転。シニアプロNO.1に輝き、ツアー3年目にして初優勝を飾った。優勝賞金1000万円と3年シードを獲得し、賞金ランキングは5位に浮上した。優勝インタビューで「大好きな日本で、こんなにスリリングでエモーショナルな瞬間が訪れるだなんて、ほんとに夢のようです」と感極まって声を震わせた。


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首位に2打差で迎えた最終日。「前半はよかった」とフロントナインでスコアを3つ伸ばしてハーフターンするも、後半の出だし10番ではティショットをまさかのシャンク。「きょうは終わったと思ったよ…」とそこでダブルボギーを喫し、頭を抱え落ち込む姿があった。それでも気持ちを立て直し、14番から連続バーディを奪取した。

首位に1打差のトータル12アンダーで最終18番を迎え、ボールも新しくし「バーディを取る」と気を引き締めた。右のバンカーまで287ヤードで、そのバンカーに入ると右の木が邪魔になりグリーンを狙うのが難しくなる。

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「超えないといけない」という状況だったが「追い風だった。バンカーの左端を狙ったら、パーフェクトなショットだった」とフェアウェイを捉え、111ヤードの2打目をカップ右上80センチに落としてバックスピンで戻し、そのままカップイン。両手を上げて喜び、ギャラリーを沸かせるイーグル締めとなった。

その一打を振り返ると、胸に手をあてて「泣きそうだった。1000球打ってもあのようなショットはできない。いまでも興奮している」と感極まる。パッティングが苦手なイエーツは、「ノーパッティング。とてもハッピー」と笑い、劇的展開となる“ウイニングショット”で大会の幕を閉じた。

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イエーツは、父の友人が欧州ツアー通算9勝でライダーカップに6回出場したブライアン・バーンズ(イギリス)という縁があり、6~7歳のときに初めてゴルフクラブを握った。しかし「そのときはそんなにゴルフをしていなくて、スキーをしていた」と、母国のスコットランドでスキーに没頭していた。さらに「13~16歳まではナショナルチームだったよ」と国の代表メンバーとして活躍していたのだ。

「ゴルフを自分で練習していたのですが、13 歳くらいから本格的にゴルフを始めた。18から22 歳のときにブリティッシュ PGA のプロショップで働いていて、そのあとドイツでお金を稼ごうと思い始めた。当時はドイツのゴルフが成長していて、ティーチングでお金を稼げると思ったから。そのあと知り合いにティーチングだけではもったいないと、ドイツの PGAチャンピオンシップにエントリーしてくれた。1994 年に アジアンツアーのQTを受け、24 歳から50 歳の間に2 回だけ優勝した。2位は 15 回っていう記録が残っているよ」と笑いながら、驚きの経歴を明かした。

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奥様の母国であるタイに32年間住んでいる。そしてマネージャーから日本のシニアツアーを薦められ、2019年に日本プロゴルフ協会(PGA)のプロテストで一発合格を果たした。新型コロナウイルスの影響で来日することができなかったこともあるが「5年ほどは子ども達の成長のために家にいたくて」とツアーに初参戦したのは23年となった。

23年で挑戦した最終予選会は17位。10試合に参加してコマツオープンの9位が最高で賞金ランキングは37位に終わる。翌24年に挑んだ最終予選会では4位でフル参戦の資格を獲得する。11試合に参加し2度のトップ10入りも含め、賞金ランキング23位で賞金シードを獲得し、今年はスターツシニアでの2位も含め調子は上々という流れのなかで優勝を掴んだのだ。

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拠点のタイにもシニアツアーがあるが「タイのシニアツアーは 6 人の決まった選手しか勝つことができない。日本のように誰しも勝つチャンスがあって、素晴らしい選手がたくさんいるわけではありません。私は日本でプレーするのが人生のチャレンジと感じていて、日本の素晴らしい環境で、日本の素晴らしい選手選手と戦えます」とツアーレベルの高さを感じ、第二の競技人生を本気で楽しむために日本で戦うことを選んだ。

「日本には、僕の愛する山々がたくさんある。その中でもとても美しいフォルムを持つ富士山が一番好き。それに鹿児島の開聞岳も、富士山と同じで美しい山のひとつ。僕はスキーを通じて山に畏敬の念を抱いているし、タイで所属するブラックマウンテンも『山』にまつわる場所。僕にとって素晴らしい環境と言えるのが日本なんです」と富士山登山をはじめ、茨城の袋田の滝を何度も訪れるなど子供たちと一緒に日本の自然スポット巡りも怠らない。

「冬は北海道でスキーに来ています。素晴らしい雪質の場所。もう年始の予約も済ませていますので、家族で来るのが楽しみ」とゴルフ以外にアクティブな一面も持ち合わせる。

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そして、念願の栄冠に笑顔を見せる。「残りのシーズンと3年のシードを得られた。大きなこと。なかには 3 年シードを獲得して怠けるひともいるかもしれないけど、私はもっと上を目指したい。さらに良くなるように引き続きやっていきたい」と、55歳はさらなる飛躍を誓った。

M78星雲・光の国からやってきたウルトラヒーローに囲まれたイエーツは「世界でも人気の彼らに囲まれて楽しかったし、タイにいる私の子供も喜ぶでしょう。早く報告したいね」とスペシャルな表彰式を終え、晴れやかな表情を見せていた。

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