NEWS
シニアツアー

【日本シニアオープン/FR】スリロットが14アンダーで優勝 シニア公式戦2勝目の裏にあった"ショット力"と"パッティング"の秘訣

2025年09月21日
Image

「第35回日本シニアオープンゴルフ選手権」の最終ラウンドが9月21日に相模原ゴルフクラブ東コース(6,997ヤード/パー72)で行われ、首位スタートのタマヌーン・スリロット(56)がパープレーで回り、他の選手を振り切って通算14アンダーで優勝。2023年の日本プロシニアに続いて公式戦で2勝目を挙げた。優勝賞金1600万円を獲得し、賞金ランキング4位に浮上してきた。

首位とは2打差の2位に海老根文博(50)、増田伸洋(52)さらに1打差11アンダーにプラヤド・マークセンが入った。現在賞金ランキングトップの岩本高志(50)は69で回り7アンダーの6位で大会を終えた。

Image

相模原ゴルフクラブで行われたナショナルオープンを制し、見事公式戦で優勝を飾った”タマちゃん”ことタマヌーン・スリロット。「メジャーは勝ちたい試合だったので嬉しいです」と表彰式後喜びを口にした。

強さの秘訣は圧倒的なグリーン上の”技”にある。

スリロットは、今シーズンこれまで日本シニア参戦5試合目だが、シニアツアー”日本シニアオープンまで”のスタッツを見ると、平均パット数は1.6760で1位であるし、各ホールでバーディ以上を奪う確率である”パーブレイク率”も1位で、安定したショットでスコアメイクできている強さが際立っている。

Image

パッティングに何か秘訣があるのだろうか。スリロットは「打つことよりも、まずはラインを大事に読むことが重要だと思っています。どこにボールを通そうか考えます」という。

「長ければ長いほどパットのイメージを区切って、短いところに狙うポイントを置いています。長いパットでは、短いエリアにポイントを置けば、長い距離を打つよりかは、気持ち的に”ここ”だと決めて打てますし、ショートパットでいいという気持ちになる」とタマヌーンは独自に編み出した巧みな技を武器にしているのだ。グリーン上の上手さが際立つ理由はここにある。

Image

ショット力も充分に磨いてきた。先週「IASSシニア」を欠場した理由は「公式戦に備えたかったから」だと迷いがない。シニアツアー初出場で初優勝を飾った2023年の「日本プロシニア」から早2年。「勝てると思っていたけど、なかなか勝てなかった」といい、同時にスイングの修正に取り組んできた。

Image

「スイング修正の目的はボールをコントロールすることで、これまで曲がりが大きかったのを少なくしたかった。飛距離も以前より20ヤードくらい伸びています」と本人も驚く成果がでている。

ティーショットで使えるクラブの選択肢を増やしながら、上・中・下、そして左・右と自在に曲げ幅をコントロールできる技術を磨き上げ、完成度を求めているのである。

Image

最終ラウンドでは、その取り組みの成果が現れた。

スタート1番では、レスキューでティーショットを打ったが、”ペナルティー”ともいえる右サイド深めのラフへ入りボギーが先行した。3、4メートルのバーディチャンスはなかなか決められなかったが、ようやく6番で2メートルを沈めてバーディ。

7番パー3では砲台グリーンからこぼれて深いラフに入ったボールを、ピンにぴったりと寄せる技術力には「ウェッジのさばきと力加減、そして瞬時の判断力が素晴らしい」と、観戦にきていた相模原のメンバーさんも感心する。


Image

この4日間で最難易度ホールだった9番パー4では、フェアウェイからピン1.5メートルに載せて、この日3人しか成功させていないバーディをしっかりと奪い、後半のゲームに繋げていく。

11番をバーディとして、2位とは4打差まで広げたが、12番でバンカーに2度捕まるトラブルが発生し痛恨のダブルボギーで面白い試合展開に。

Image

ゲームの行方を左右したのが15番。スリロットはセカンドでフェアウェイから残り146ヤード、9番アイアンでピンを狙ったが「ペシャーン」という音と共にボールはサブグリーンのバンカーに入ってしまった。

ここからがスリロットの真骨頂。「実は練習していた」と表彰式で明かしたが、バンカーショットは、ピンまで3メートルの絶好のポジションに着けて、スーパーパーセーブに成功。優勝を確信した瞬間だった。

Image

残り3ホールは優勝に向けて、攻めるというよりも手前からのジャストタッチ。ここは慎重にパーを守り、通算14アンダーで優勝を決めることができた。

難グリーンに苦しむ選手が多い中で、スリロットのパッティング力が冴えわたった72ホールだった。

日本シニアオープンで優勝したことでシニアツアーは3年のシード資格を獲得。そして今年の”日本オープン出場資格”も発生し「プロシニアで優勝した時も日本プロに出場できましたし、今回もレギュラーの日本オープンに出場できるだなんて、楽しみです。若い選手の中で、56歳の自分がどれだけ通用するか試してみたい」とにっこり。

「シニアツアーでは、今年はあと2勝したいと思っていますし、この試合で勝ったことで自信があります」。スリロットは堂々と勝利宣言し、強さをみなぎらせたのだった。

Image

キャディを務めた息子・BOSS(ボス)くんに対しては「4度目の帯同は担いで歩きだったし、大変だったと思います。前夜、彼は緊張していたように感じていましたし、上手く乗り切ってほしいと願っていました」と父は明かしたが、優勝までの道のりを一緒に過ごすことができたことで、家族の絆は一層深まった。

Image

最終組についたスリロットとマークセンのギャラリーは、レギュラー時代から変わらず応援している日本のファンだといい「やっぱりあの”タイ・スマイル”に癒されますよ。プレーと、プレー以外とかわらないんです。とっても穏やかなところに惹かれます」と打ち明けてくれる。

強さとやさしさを兼ね備えた“タマちゃん”が、これから連戦が続くシニアツアー”秋の陣”で旋風になるかもしれない。

Image