
50歳、岩本高志の強さと若さが光った、新規シニアトーナメント「IASSシニア・プロアマ」。
大会は賞金を懸けた”シニアトーナメント”と、プロとアマがプレーを通じてゴルフの楽しさを味わういわゆる”プロアマ戦”を並行して開催するという初の試みだったが、大会を終え岩本は「本当に楽しかったです。同組みんなですごーいとか言える雰囲気で、普通にプライベートラウンドしているような感じでした。さすがに終盤はしっかり集中してプレーしましたが、アマチュアの方がスコアを気にしてソワソワしていたのを感じていて、ずっと応援してくれていました」と振り返った。
どんな雰囲気なのだろう。宮本勝昌はスタート前に「試合っぽくないなぁ」と苦笑い。平塚哲二はラウンド後に「ちょっと僕は不器用なのでね、すっかりプレーに集中してしまいましたが、エールは声出して送りましたよ」と正直な答えも返ってくる。

岩本からは「いつもはギャラリーの方は距離をとってプレーをみてもらっていますが、なんていうかすごく近いギャラリーみたいな感じですね。アドバイスどころか、みんな上手でしたしプレーも早くて、気を遣わせたところもあるかもしれませんが、むしろプロアマで良かった」という感想が聞かれた。
同組にプロが2名という組み合わせは、プロにとって試合のプレッシャーを受ける相手が1人だけということでもある。それはプレーに集中しやすい状況で、岩本にとっては環境が優位に働いたようである。

最終ラウンドは「攻めて10アンダーまでスコアを伸ばす」と岩本は目標を設定し、首位と3打差3アンダー13位からスタート。初日のラウンドではセカンドショットがグリーンを捉えるたびにバックスピンがかかり、かなり戻ってしまったという。
「だから最終ラウンドは戦略をしなおして、セカンドショットは大き目で打ち、特にショートアイアンを持った時は上から戻せるようにと心がけました」と攻め方を徹底しゲームを進めていった。

2番でバーディを先行させたが最難易度の3番パー3でボギーに。ここから集中力を高め前半で3つスコアを伸ばし後半へ。岩本は初日に10番パー5で大会唯一のイーグルを仕留めていたこともあり、最終日も良いイメージの中でバーディを奪取。15番でこの日8つ目のバーディを重ね、この時点で二桁アンダー首位に並んだ。
「目標をクリアしたことで、自分が良い位置にいる。絶対に16番はバーディを獲りたい」と思った瞬間に、ティーショットを左のラフへ曲げてしまい、チャンスを逃してしまった。それでも開き直って17番パー3では5メートルのパットをしっかりと打ち切り、もうひとつスコアを伸ばして単独首位に。最後まで崩れることなく戦い抜き、2勝目を手にすることができたのだった。

万全にして挑んだといえば、そうでもない。
7月の北海道の試合中に腰を痛めてしまい、途中棄権まで考えたこともあった。レギュラー時代にはヘルニアを患いシーズンの半分を棒に振ったこともある。それでも周囲のサポート体制に助けられて、ようやく腰痛は不安も和らいだところである。岩本のモチベーションは来週開催に迫った「日本シニアオープンで優勝」することにある。「いい弾みになりました。だからこそ自信を持って挑みたい」と目を輝かせる。

そういえば吉報もある。先週の最終プロテストで合格した川﨑智洋は、岩本と同じ専修大学のゴルフ部出身で、たまたまプロテストの前週に、岩本のホームコースである山梨のメイプルポイントで一緒にラウンドした。「すごくいいやつなんです。ポテンシャルもある。だから初めてのプロテストだというので、とりあえず合格してこいって言ったんですよ。そしたらギリギリで合格してくれました」と思わず笑みがこぼれた。
「(専修大学の)先輩には、羽川豊さんが現監督を務めていますし、藤田寛之さん、横田真一さんといった世界で頑張る先輩の姿もある。後輩にはもうすぐシニア入りする近藤智弘さんとか、プロテストに合格した川﨑くんもいたり、プロに恵まれた環境にいるんだなって思っています。だからこそ、今は自分にできることを精一杯やりたい」。岩本は決意を新たに、次の目標に向けて邁進する。


写真:茨城県つくば市から駆けつけた岩本プロの後援会会長を務める川上さん「プロは真面目な姿がまたかっこいい。これからも勝ち星を重ねますよ」とこれからもできる限り応援に駆け付けたいと話す