
「考えれば考えるほど、涙が出ちゃいます」。レギュラーツアー通算8勝の細川和彦の長男・和広が“男涙”を見せた。昨年の最終プロテストはわずか1打足らずで不合格。悔しさを胸に挑んだ今年は、トータルイーブンパー・24位タイで見事合格を果たし、プロゴルファーの仲間入りを果たした。
「いろんなひとに支えられて、ここまで悔しい想いをしていた。去年のことはずっと忘れられなくて、帰りの車はずっと泣いていた。今週は天候が不安定のなか、ずっと緊張していたけど、達成できて本当によかった」
合格の裏には、シニアプロからの温かい“エール”もあった。父・和彦が高橋勝成のチームに所属している縁で、中山正芳らに「今回落ちたらどうなるかわかっているんだろう」とプレッシャーをかけられ、寺西明からは3日目の夜に「自分のゴルフをやれよ」とのメッセージを受け取ったという。「それがすごく励みになりました」と振り返る。

最終日の朝は緊張のあまり「食欲が出なくて」と食べ物が喉を通らなかった。スタート直後にボギーを喫し、そこからは思うようにバーディが奪えず焦りも募ったが、9番で長いバーディパットを沈めて落ち着きを取り戻す。
後半に入る前には、応援にかけつけた先輩プロ・徳本中(あたる)に声をかけられ、「丁寧なゴルフを心がけ、1つのミスも許されない気持ちで耐え抜いた」と集中力を高めた。12番でバーディを奪うも、15番でボギー。しかし強雨のなか粘り強くスコアをまとめ、夢をつかんだ。
しかし、9番で「長いバーディパットが入って、そこからちょっと一息落ち着けた」と前半の最終9番で1つスコアを取り返して1オーバーで折り返し。すると、後半に入る前に、「わざわざ応援に来てくれた」と細川の応援にかけつけた先輩プロの徳本中(あたる)に会いパワーを注入。
「丁寧なゴルフということを心がけて、1つのミスも許されないと思っていたので、ずっと耐えていました」と後半に入り12番でバーディを先行させ、15番でボギーを喫するも、朝から振り続ける強い雨のなか“耐えのゴルフ”でまとめた。

9歳でゴルフを始め、埼玉栄高から中央学院大で研鑽を積んだ。厳しさを知る父は当初反対していたが、「やりたいならやれ」と背中を押され、プロへの道を選んだ。この日のウエアは、父が2005年「日本ゴルフツアー選手権宍戸ヒルズ」で優勝した際に着用していたオレンジのシャツと黒のパンツ。勝負の日ということもあり「合わせていこうと思った」と、雨の中カッパを着てプレーしたが、後半15番で2メートルのボギーパットを前に雨が止むとすぐに脱ぎ、そのパットを沈めて凌ぎ切った。“オレンジ×黒”は今後の“ゲン担ぎ”となりそうだ。
合格の報告を受けた父・和彦は「おめでとう」、寺西は「プロになるんやから、きょうからしっかり練習しいや」とメッセージがあった。プロになったことはゴールではなく、ここからが本当のスタートだ。
「目標はお父さんを超えること。やっとスタートラインに立てたので、まずは1勝を目指したい。そのためにもQTを通過してツアーに出られるよう頑張りたい。悔しい経験を3年くらいしてきたので、もっと上に行って、有名な選手になりたい」。涙をにじませながらも、細川和広は力強い眼差しを前に向けた。
