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【日本ゴールドシニアユニテックス杯/1R】「2日連続で18ホール回るのは初めて」ステージIIIの胃ガンで全摘手術を受けていた海老原清治の復帰戦は『79』

2025年09月05日
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68歳以上のプロゴルファー日本一決定戦、「日本プロゴルフゴールドシニア選手権ユニテックスカップ2025」の練習日に、昨年よりも痩せ細った姿でラウンドをする男の姿があった。「検査していればこんなことにならないのに、元気だからそのままいっちゃった。バカだよな」。そう悔やむ76歳の海老原清治にとって、今大会が胃の全摘手術を受けてからの復帰戦となる。

腹痛の自覚症状はあったが、甘く考えて1カ月くらい放っていた。我慢できなくなって病院で検査を受けたところ、ステージIIIの胃ガンが見つかる。今年2月のことだった。もう少し発見が遅れていたら命の危険もあったという。手術は310日。1年前なら内視鏡手術で済むはずだったが、ガンはかなり侵攻し、胃を残すことはできなかった。

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手術して2週間で退院できたものの、場所が場所だけに「ご飯は食べられないし、吸収力はないし、どんどん体重が減っていった」。75キロあった体重は退院直後こそ71キロに落ちたくらいですんでいたが、「今が一番低い」と現在は60キロまで減ってしまった。「食べないと痩せちゃうし、食べ過ぎても苦しいし、けっこう難しい」。

また、前週までは点滴による抗がん剤治療を受けていた。その副作用で髪の毛は抜け、口内炎により「美味しいと思ってもすぐに美味しくなくなっちゃったり、また美味しくなったりいろいろ」と、日常生活にも支障をきたしている。それでも「手術から半年過ぎて、だいぶ楽になった」と本人は前を向く。さらに現在のところ、転移は見られないことから根治できると信じている。

今週の出場はギリギリまで悩んでいたが、「人間って楽な方に流されるから、戦いの中にいた方が自分のためになるかな」と、2017年大会から3連覇している今大会を復帰戦に選んだ。

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ゴルフを再開したのは6月のこと。最初は「半分回ってきたとかそんな程度」と、18ホール回る体力はなかった。しかも「抗がん剤をやると疲れちゃう。今日ゴルフをしたら明日、明後日は休んでから次」と、練習日、初日と2日連続で18ホール回るのは、手術後では今週が初めて。最終日を完走すると3日連続のラウンドとなる。

その大会初日は「79」と70台で回ることができた。それなのに、「76歳だから『76』で回りたいと思っていた。だけど、後半の13番から4つ連続でボギーが来て、7オーバーになっちゃった」と2002年の欧州シニアツアー賞金王は悔しがる。

もっとも苦労しているのはアイアンショット。「今は腕力がないからボールが上がってくれない。手前からとっとっとっとって転がして乗せるしかない」。アイアンでグリーンに直接落として止める球はまだ打てない。それでも初日の7オーバーは、76歳という年齢を考えると決して悪いスコアではない。実際、ゴールドの部に出場している60人中33位タイにつけている。「最終日こそ」と76以下で回るエージシュートを決めて、復帰戦を締めくくりたい。