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日本プロ

【2025日本プロ・エピソード】2度の日本プロ開催ともに印象に残る2度のプレーオフ戦。谷汲を味方につけて清水大成が優勝につなげた奇跡のショット

2025年07月04日
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日本最古の歴史あるトーナメント「第92回日本プロゴルフ選手権大会」が5月22日から25日の期間、岐阜県にある三甲ゴルフ俱楽部谷汲コースで開催された。

「谷汲の持っている”ポテンシャル”を全部引き出せました。5月の時点で最高のレベルに仕上げられたと思っています。19年前の日本プロ選手権を開催したからこそ、メジャーにふさわしい環境ができました」と大会コースセッティングアドバイザーの桑原克典プロは自信をのぞかせていた。

2度目の日本プロ開催と聞こえは良いが、簡単には物事は進まない。それは気象条件や選手レベル、クラブの進化など当時とは状況が異なり、環境も変化する中で、公式戦“日本プロ”を知る人々の工夫や知恵が必要とされていた。

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大会特別協賛をいただいた三甲株式会社の後藤甲平会長は「2006年開催の日本プロは右も左もわからない中でした。再度開催に向け研鑽を重ね、幾多の意見を交わし、ようやく2度目の開催が実現できました。全スタッフの誠意努力のおかげで、大会をむかえることができるのです」と感謝を口にする。

また今回コースメンテナンスに注力したメインスタッフのコースグリーンキーバーの福田浩司氏は、2022年の日本オープンでの経験を買われ、今年の日本プロ舞台づくりに注力していただいた。「去年は猛暑で水不足に悩まされましたが、秋には芝を一万平ほど張り替え作業をし、ようやく春を迎えるにいたりました」と苦労を明かしている。「大会初日の雨予報から天候が回復すれば、スピードも13までは出ると思います。スタッフ一丸となって大会を支えます」。キーパーの力強い言葉が大会を支えていたのだ。

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「テーマは原点回帰。34年前のゴルフ場を思い浮かべて、コース設計者と頭の中で対話しながら、今回のコースづくりに携わったからこそ、時代にあった新しいものが見えてきた」と桑原プロ。長いパー3マネジメントや、谷から吹き抜ける風の計算が必要になる。さらにアウト・イン共にドラマティックなあがり4ホールが用意されたのも、ゴルフファンを大いに楽しませてくれる仕掛けでもあった。

日本プロには144名が出場し、第2ラウンドを終え決勝ラウンドに進出したのはイーブンパー60位タイまでの71名となった。選手は口々に「ラフは長く、グリーンも硬くて速い」「コツコツと凌いでいくしかない」と、チャンピオンコースに向き合うために、リスクを背負わずじっとチャンスを待つことを覚悟した。

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決勝ラウンドでは、一段ギアを上げて試合に挑む立役者が上位に顔を並べる。中でも歴代チャンピオンの堀川未来夢は67で回り通算10アンダーの4位まで浮上したが、コースの難しさに頭をひねらせていた。「240ヤード台で、4つあるうちの3つが難しい。あとは8から10番ホールが難所です。そのパー3ホールの3つを加えて計6ホールを耐えれば、優勝のチャンスもある」とマネジメントの必要性を説いている。

「今週は距離もあるコースなので、自分のやりたいマネジメントができないホールがあります。持ちたくてもドライバーが持てないというホールもある。それはやむを得ずなので、ベストな攻略はないですね」と頭脳プレーヤーを最後まで悩ませ続けたのだった。

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最終ラウンドでは清水大成と生源寺龍憲が同スコア(14アンダー)で並んでプレーオフへ。
1ホール目で
清水が放ったティーショットは右へ流れ、レッドペナルティエリアのがけ下に消えた。打った瞬間に「終わった」と清水は落胆したが、ボールは雑草の生えている茂みの中で運よく見つかった。安全にフェアウェイへだし、残り250ヤードを全身で振り抜くと、ボールはグリーンを捉えピンまで4メートルの距離に着けるスーパーショットを披露。このホールを互いにパーとし、次のホールへ望みをつなぐことができた。一打一打集中力を高め、4ホール続いたプレーオフは、清水が勝利の終止符を打った。

清水は窮地に追い込まれたティーショットから一転、谷汲が味方したとしか思えない"奇跡のショット"があったからこそ優勝を飾ることができたのだ。

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2006年の日本プロでも、大会チャンピオンを決めたのはプレーオフだった。最終日に近藤智弘と友利勝良が通算10アンダーで並びプレーオフ1ホール目で友利がパーパットを外して決着。近藤がプロ7年目で初優勝を公式戦優勝で飾ったのだ。

プロ5年目の清水大成にとっても初優勝が公式戦。「最高です」と清水は優勝インタビューで声高らかに応えた。26歳同士の勝つか負けるかしかない戦いは、両者逃げずに最後まで攻める姿勢を貫いた。19年前と同様、プレーオフに勝負を持ち込み、一筋縄で勝者は決まらなかったが、胸を熱くするプロの姿がそこにはあった。

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日本プロ終演後も、三甲ゴルフ俱楽部谷汲コースでは大会にまつわる展示がされており、出場選手サインパネルや日本プロ大会記念グッズの販売をしている。また東京新橋にある三甲株式会社の東京本社ビルでは、一階にあるカフェ「フアラライ」と日本プロがコラボした「PGA CHAMPIOMSHIP CAFÉ」が期間限定でオープン。歴代チャンピオンの大きな写真がカフェの窓にラッピングされ、街ゆく人々の目をくぎ付けにしたことも、新しい大会の取り組みであった。

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