
2日目にトーナメントレコード「62」を叩き出して、2打差の単独トップに躍り出た宮本勝昌。それでも「いいスコアが出たのでスコア的には大満足ですけど、ゴルフの内容とかフィーリングは決して良くない。苦しんでいたんです」と明かす。
最終日は強風が吹き荒れる厳しいコンディションで、3バーディ・1ボギーの「70」でまとめてトータル14アンダーまで伸ばし、昨年9月の「ファンケルクラシック」以来となるシニアツアー7勝目。終わってみれば後続に4打差をつける圧勝だった。

2打差のトップで最終日の1番ティに立った宮本だったが、いきなり試練が訪れる。3番ユーティリティで打った朝イチショットをダフリ、ボールはフェアウェイ入り口付近のラフで止まった。3オン2パットのボギーで、同じ最終組で回る2位のプラヤド・マークセンとの差がいきなり1打に縮まる。
「ちょっと気持ち悪かったんです。1番のティショットは230ヤード飛ばしたいんですけど、3番ウッドだと大きいし、3番ユーティリティだと行かない。雨が降ってランが出ないことも分かっているので、ユーティリティでちょっと右を向いて強い球が出たらいいなといろいろ考えていた」。
迷いと力みが生んだミスショット。しかし、「(天候が悪くて)僕が苦しんでいるので、3アンダー、4アンダーで回るのは容易ではないと分かっていた。まずは自分が崩さないというのが大事だと思っていました」と、2番以降は冷静に危なげなくパーを積み重ねていく。

ショットが不調で、向きを変える強風に手を焼きながらも、「グリーンオーバーも含めて上には行かないように」と悪いなりにもコースマネジメントを徹底。下りの難しいパットを残さなかったことも崩れなかった要因だろう。8番パー5では2オンに成功し、2パットで、ようやくこの日最初のバーディを奪った。
後半に入って、13番パー4で再び2メートル強のパーパットを沈めてしのぐと、15番パー5は残り35ヤードの3打目を1メートルに寄せ、16番パー3ではピンまで190ヤードのティショットを6番アイアンで1メートルにつけるスーパーショットで連続バーディ。結局一度も並ばれることなく、そのまま逃げ切った。

「振り返ってみたら、3日間を通してパッティングだけは良かった。もともとロングパットの距離感には自信があるので、パッティングが決まっているときはスコアメイクしやすいですし、優勝争いできるだろうなと自分では思っています」。宮本は長くマレット型の中尺パターを愛用しているが、実は前週出場した「全米プロシニア」からマイナーチェンジを加えている。36インチから37インチに「1インチ伸ばした」。
その着想は2018年、19年のレギュラーツアー賞金王の今平周吾。宮本と同じように中尺のマレットを好んで使っている。「周吾がいつも短く持つんですけど、グリップエンドを余らすようにしたんです。持っている感覚は36インチのときと変わらないです」。36インチでも37インチでもヘッドから手元までの長さは同じ。では、37インチを短く握ることにどんな効果があるのか。

「僕は手を動かしたい人だから、ラインに乗せやすい感覚がちょっと出たんです。試しにやってみたら良かった」と宮本は理由を説明する。手元側に少し重量があることで、カウンターバランスの効果でヘッドを動かしやすくなる。前週の海外メジャー戦こそ予選落ちに終わったが、今週はミドルパットをよく決めて優勝を手繰り寄せた。
「大貢献ですね。もうパッティングに救われた3日間でした。今の自分のショットの調子で、このコースコンディションで14アンダーは、正直始まる前はイメージが出なかった」とまでいう。

開幕前は8位だった賞金ランキングも、優勝賞金1,000万円を加え、マークセンに次いで2位に浮上。3年連続の賞金王に話を向けると「一戦必勝が終わってみれば賞金王だったらうれしい」と、いつも通りの答えが返ってきた。
そして、ショットが本調子でない状態で掴んだ勝利については「めちゃくちゃうれしいです。やっぱり一番いい薬をいただいた。また明日からの練習の励みになりますし、次の試合こそいい状態で迎えられるように、モチベーションはさらに高まります」と笑顔を浮かべる。
次戦はディフェンディングチャンピオンとして迎える2週後の「スターツシニア」(6月13~15日、茨城県・スターツ笠間ゴルフクラブ)。勝利の味をカンフル材にスイング修正に努め、連覇を目指す。
