
19年ぶりに2度目の日本プロ開催を控える三甲ゴルフ倶楽部谷汲コース。
19年前の日本プロで初優勝を飾った近藤智弘は当時28歳で「谷汲はいい思い出ばかり。当時はアウト・インが入れ替わっていましたし、それほどコースは長くなかった。最終日は強風でものすごく難しかった。スコア伸びる感じはなくて、耐える感じだったから、友利さんが来た。プレーオフの最終ホールでは、奥からアプローチして優勝したということはしっかり覚えてますよ。その時も難しいコースだったなってね」と追想する。プレーオフの対戦相手・友利勝良は当時51歳で、28歳の近藤とプレーオフで戦ったという名ドラマが生まれている。
谷汲コースで初優勝を飾ったことで三甲株式会社とのご縁が生まれ、4年前に愛知へ引っ越ししたことをきっかけに系列の京和コースを訪れる機会が増え、近藤は後藤会長からのお声がけもいただき「三甲ゴルフ倶楽部」に所属することになった。

日本プロ開催が決まってから、特に谷汲で練習をしてきたわけではなく「コースは当たり前に知っているので。ただ当時より距離は長い、ティーグランドを増設しているし、難易度も上がっている。自分の実力は落ちているけど期待度は高い。得意コースだからいいだろって言われるけど、そんなわけはないんですよね」と苦笑い。「全体的にショートホールはグリーンに乗せられない感じもあるし、パーが拾えるかどうかで全体のスコアが動くのかなって」とコースの印象を話す。「ただ、グリーンコンディションを会長は心配していたから、みんなでチャンピオンコースを創り上げられて本当に良かったと思うし、みんなにとってタフな一週間になる。特に僕とっても」。試合功者の近藤でもプレッシャーが重くのしかかる。
「もちろん結果も求められるけど、まず出場できることは本当に嬉しい。しかも2度目の出場をね、実力で。よくここまで頑張ってきたんだなって」。歴代チャンピオンとして19年ぶりの舞台に立てる喜びを、近藤はじわりとかみしめている。

現在47歳。シードに復帰後のこの数年はツアーという仕事場について「顔ぶれもがらりと変わり、正直言ったら仕事場はつまらない。話す同世代もいないしね。当然ゴルフは集中してやってはいるけど、なんとなく会話してリラックスしたりできるような雰囲気が全くないんですよ」と世代間ギャップを感じ始めている。
「今は20個くらい年下の子たちがジュニアの試合をやってるような感覚。挨拶はしてくれるだけで、なんにもない(笑)。あまりにも差が開きすぎてね。この2、3年でかなり面子が変わった印象。昔はおじさんたちが強かったみたいな時代があったけどね。僕も頑張ってはいるけど、現実的には苦しい」と気持ちをはきだす。公傷制度を使って体をケアしながらツアー出場を繰り返していくうちに、何かこれまでにない違和感が生じてきたのだ。

「自分の手ごたえと成績があわない。カットラインもはるかにイメージと違うし、平均したら3打くらいは違うんじゃないっていう感覚なんです。そうなると、もう予選カットばかりみているような状態。悪くなくても予選落ちるとか、いいプレーを4日間していても、20~30位みたいな。ベスト10に入れる感じがない。ちょっと正直いろんな意味でくじけてはいるんですけど」と冷静に状況を分析しているが、「今年はプレッシャーもあるけど、良い刺激もあるし楽しみたい。くじけられない。結果はともかくとして、前向きに一生懸命にやりたい、絶対にね」とベテランの機は熟している。
近藤にとっては3度目の生涯獲得賞金25位以内の資格の権利行使。過去2回シードに返り咲く強さを自信に変え、谷汲の日本プロ覇者は戦い抜く決意を新たにする一方、「シニア入りまであと2年だし、シニア出場も考えていますよ。楽しそうやし、ゴルフは引き続くので、まだまだ上手くなりたいしね」と充実感を漂わせていた。
