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【日本プロ/事前】「テーマは原点回帰」コースセッティングアドバイザー桑原克典が語る谷汲コースのキーホール

2025年05月21日
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昨年の富士可児に続き、日本プロ大会コースセッティングアドバイザーに就任しているのが”クワカツ”こと桑原克典プロ。「僕は小学生の時からゴルフを始めて岐阜にある各務原カントリー倶楽部で練習をしていたのですが、各務原の隣のコースが三甲の後藤会長がメンバーでして、僕が岐阜オープンに中3くらいから出場していたときから、各務原にはジュニアがいるって、気にかけてもらっていたのです。それから数えると40年くらい続いているご縁があるのです」と当時を振り返る。

愛知県出身の桑原克典は、ジュニア時代に中部地区のタイトルを総なめにした天才少年時代を経て、愛知学院大学に進学。卒業後プロテストに合格し、長きにわたり地区のゴルフトーナメントを支え、社会活動にも貢献。現在中部プロゴルフ会の会長を7年目を迎え、プロ、アマ問わずゴルフ発展に尽力している日々を過ごしている。

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2年前に開催が決定してからというもの、桑原は谷汲へ何度も足を運び、チャンピオンシップコースに向けたメンテナンスやセッティングについてアドバイスを重ねてきている。「ゴルフコースにはコンセプトがあります。ティーショットから始まり、プレーヤーにどんな選択権を与えられるかで良いコースの基準がわかります」という。そんなコンセプトを意識した、日本プロに向け改良したホールがいくつもあるが、特に2つのホールについて紹介する。

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12番パー4(359ヤード)

12番はドライバブルホールなんですけど、定義はリスクと報酬。これまではリスクがあまりにも少なかった。飛ぶ人有利になってもいけないし、刻む人には有利にとそれぞれにメリットがあるように。グリーン手前のバンカーをどうするかに注目してもらいたいんです。

バンカーに関しては、プロの技術だったらバーディチャンスに着けられる。ワンオンを狙ってバンカーに入れても、バンカーには"アゴ"があるので、そこがポテンシャルになる。プロは左足上がりだと易しいショットになりますから、左足下がりにしてしまえば、アゴが効いてくる。ただ、左足下がりにしてしまえば、広すぎてしまうデメリットも。いけるとプロに思わせておいて、結局でないのかーっていう、プロの姿を見たいですよねだからバンカーの中に島をつくって摺り上げたという設計にしました。

このホールはグリーンが大きいのですがうねってないので、ピン位置はそれほど気にならないかな。
ほぼきざんでバーディチャンスの方が多いかなと想定していますが、リスクがあることを忘れないでもらえれば。

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15番パー4(350ヤード)

ショートパー4で、ワンオンを狙う選手もいると思いますが、距離を残してチャンスを狙う選手もいるはずです。
グリーン手前に用意された深いバンカーは”硬いウエストエリア”に変更しましたよ。バンカーの砂を抜いて、固めました。万が一入った時は、バンカーから出ないようなものにする。ピンまで15ヤードからグリーンに乗らないとか、プロのミスが話題になるかな。

イーグル狙う人には、はいワンオン狙ってくださいね、どうぞ。レイアップする人は木の手前か、先に刻むのか3パターン用意して、最終組の3人がそれぞれの攻め方をするというのも面白いのではないでしょうか。で、結局だれが一番良かったのか、凌げたのかというのもみてもらいたいです。

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2006年大会は、桑原自身も選手として出場していたこともあり、ゲームの攻守やストーリーを忘れたことはない。だからこそ、今回はアウト・インを入れ替えた当時のルーティングを元に戻した。「当時設計者の意図する1番から18番というコンセプト通りにしたのです。それは私にとって大事な『原点回帰』。1991年に開場した当時のコンセプトを、随所に感じていたのです」と言葉を弾ませた。

「グリーン付近にあるスプリンクラーがずいぶんとグリーンから離れた位置にあったりと、高麗芝がどんどん侵食してベントグリーンが小さくなっていく。そんなホールも随所に見られましたので、グリーンをラージにしたりして、エキサイティングなピンポジションが設定できるようにしたり。コース設計者と、こんな意図でコースを作っていたんですよね、と頭の中で対話しながら改良させていただいたんですよ」と、34年前の谷汲コースに思いを馳せながらのセッティングになったと説明した。

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最後に「今回僕は、谷汲の持っているポテンシャルを全部引き出せました。この5月の時点で最高のレベルに上げられたと思っています。19年前の日本プロ選手権を開催したからこそ、メジャーにふさわしい環境ができました。選手が大会に花を添えてくれるはずです」と桑原は自信をのぞかせる。

選手が口々にする長いパー3の攻略や谷からの風、午前午後時間帯によってどうやって自分のものととらえていくのかも見もの。「アウト・イン共にあがりはドラマティックな4ホールが用意されています。どちらも風向きが同じで、いったん風が吹いたら、あがりがややこしい計算になるので難しい」とニヤリ。今年の日本プロも、選手の駆け引きを楽しめる”コースセッティング”から目が離せない。

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