
60歳以上で東日本在住のプロゴルファー68名による「関東プロゴルフグランドシニア選手権大会」最終ラウンドが箱根湖畔ゴルフコース(6,431ヤード/パー72)で行われ、首位9アンダーからスタートした久保勝美(62)が3バーディ・1ボギーでスコアを2つ伸ばし、通算11アンダーで大会完全優勝を果たした。中上達夫PGA副会長より優勝賞金35万円と優勝カップが授与された。久保は2023年に続く大会2勝目を挙げ「歴史ある大会で偉大な先輩たちの名前がある中、優勝できて本当に嬉しいです」と喜びをにじませた。
またグランドルーキーとして出場した芹澤大介(60)、米山剛(60)が通算9アンダーで首位2打差3位と健闘。9月に行われる日本グランドシニア選手権(会場:関空クラシック)にはシード選手を除く上位19名が進出することになった。

62歳の久保勝美が63をマークして、エージシュートにあと1打というビックスコアが飛び出した第1ラウンドだったが、最終ラウンドは久保のスコアに並ぶハイレベルのゲーム展開が繰り広げられた。
初日3オーバー39位の高見和宏(65)が64を叩き出し初のエージシュートを達成。31人抜きのナイスラウンドはレギュラー2勝、シニア2勝を挙げているベテランの意地を見せた。さらに最終組から5組前でプレーしていた真板潔(65)が9バーディ・ボギーフリーでホールアウトし、久保と同じく63をマークし猛チャージをかけてきた。

真板はスタートから連続するパー5でバーディが獲れず肩を落としたが、3番で3メートルのバーディが来た後、5番で長い10メートルを仕留めたのを皮切りに、4メートル前後のバーディパットを2度沈めて前半32とし、後半は13番から4連続でミドルパットを決めると、とどめは18番の2.5メートルでフィニッシュ。

「今日はいやらしい切れ方をしないピン位置でしたよ。ただ細かなショットの距離感が打てず4、5メートルを残してしまったのは、まだまだ下手です」と歯切れも悪いが、「ようやく思ったところにパターが打てています。ほんと久しぶりの感覚がよみがえって良かったです。5月末のシニアツアー(すまいーだカップ)に繋げたい」と光明が差したようだ。真板にとっても初のエージシュート達成で、通算10アンダーまでスコアを伸ばして2位で大会を終えている。

最終ラウンド最終組でプレーしていた久保は、前日とは一転、バーディチャンスが決められない。3、4番では連続バーディで畳みかけたと思われた。6番は「そんなにグリーンは速くないのにね。アップヒルだし、ピンまで残り68ヤードから押さえてフェースをかぶせ過ぎた」とカップまで5メートルのバーディチャンスを作ったのにも関わらず、ファーストパットをショートして痛恨の3パット。24ホール目にして初のボギーを悔しがった。
最終組の中では4打リードでバックナインに入ったが「同組のスコアも伸び悩んでいたし、パッティングが打てていないし、大事にいこうとし過ぎて、少し余裕でいましたね」と振り返る。13番でガードバンカーからピンそばに着けてようやくバーディを獲ったが、その後はチャンスをつかめずパーでしのぐ展開が続いた。


迎えた最終18番パー5。久保のティーショットは右の林へ向かい、ボールは木の下へ。セーフティーにフェアウェイへ出したが、3打目はグリーンをオーバー。ここでパーセーブできなければ、真板とのプレーオフ。久保はパターを選択しグリーン外から18メートルのパッティングを決意。絶妙のタッチをみせカップまで80センチの距離にピタリと着けてパーで抜けることに成功。試合功者ならではの見せ場を作り、同組の仲間から「優勝おめでとう」と声をかけられ、我慢の18ホールを喜んだ。
一方で「今日はね、パターが打ててなかったね。シニアツアーでも優勝争いとか上位争いしているときって、どうしてもパターが打てないんですよ。打とうと思っているのにね。それはこれからの練習の課題です」と久保は口元を引き締める。

首位で迎えた最終ラウンドは注目も集まり、大きなプレッシャーが押し寄せる。そんな状況を乗り越えるためにはどうすべきなのだろう。久保は「昔、日本シリーズで藤田寛之プロが最終ホールで優勝かかかる難しい1メートルほどのパットを一見、難なく沈めたシーンがあってね。すごいなって、その時のことを本人に聞いたら心臓バクバクだっていうの。だけど普段の練習の成果が出てくれたというのを聞いてね。そういうふうに自分も大事な場面で身体が動くように、普段の練習の積み重ねしかないと思っています」と達観している。

「僕はショートゲームが持ち味で、人よりパッティングの練習はやっている自負もあります。シニアツアーではもう、セカンドオナーだし、そういうことでちゃんと今の自分を受け入れて、自分の武器を磨くしかない。今年はシニアツアーのシード権獲得と、日本グランドタイトルを狙うこと」と課題も明確。「ベストを尽くすためには、時間のある限り、チャンスのある限り、これからも日々努力を続けていきますよ」と久保は怯むことはない。

「62歳の俺が頑張れば、仲間の崎山、清水、そして秋葉や田村にもいい刺激になってくれると思っています。60歳過ぎてからツアーで優勝できたことは仲間の自信でもあります。そんな仲間がいるからこの年齢までやってこれているんです」と久保らしい人情味ある言葉が口からこぼれた。
1977年から始まった歴史ある関東グランドシニアの優勝杯は、格段に大きく重量もしっかりとある。久保は2度目のタイトル戴冠に「ほんとに重いなぁ」と汗を拭いながら優勝杯を高く掲げ、ビックスマイルで写真撮影に応じ、優勝の喜びを仲間と分かち合ったのだった。
