
箱根カントリー倶楽部で行われた「ノジマチャンピオンカップ箱根シニアプロゴルフトーナメント」の最終ラウンド。首位と3打差の中に15名がひしめく混戦の中、4アンダー首位スタートのプラヤド・マークセン(59)が6バーディ・3ボギーの68で回り、スコアを3つ伸ばして通算7アンダーで大会初優勝を飾った。シニア通算24勝目を挙げ、ツアー最多優勝数の記録を更新し、優勝賞金1100万円を獲得した。また14番パー3ホールでホールインワンを達成した谷昭範(50)に賞金100万円が贈られた。大会60歳以上のグランドシニア賞は2オーバー、144ストロークで回った東聡(64)も100万円を獲得した。

キジやうぐいすの鳴き声が聞こえる箱根は、緑豊かな春らしい景色が広がる。最終ラウンドの朝は厚い雲に覆われていたが、午後になると気温も上昇。ようやく太陽も顔を出すが、スタート時とのコースコンディションが目まぐるしく変わる中で、ゲーム展開も出入りが激しい。グリーンスピードは12フィートを超え、この二日間は予想以上の風が吹き抜け、選手は苦戦を強いられた。
最終ラウンドではゲームスタイルが特徴的なタイ出身の3選手がゲームをけん引し、それぞれ思惑の中、駆け引きが始まった。

マークセンは1番スタートホールをバーディとしたが、4、6、7番でボギーと失速。8番で取り返すものの前半でウィラチャンに首位の座を奪われてしまった。一方でウィラチャンは、パッティングを決めきれずスコアを伸ばすことができずにいた。後半にはいると風も強くなる中でマークセンは13、15、16番で着実にチャンスを仕留め、一歩リード。最終ホールでは6メートルのパッティングを沈めて、圧巻のバーディフィニッシュ。スコアが拮抗する中、冷静に流れを見定めていた。
「風でスイングが押されないよう、トップの位置を意識して我慢しました。それと風が強い時は、まずはフェアウェイにボールを置くことを優先しました」とマークセン。後半はチャンスホールでマネジメントが功を奏し、スコアを伸ばすことに成功。終わってみれば2位に2打差を着けて、大混戦を制したのがキング・オブ・シニアのマークセンだった。これまではシーズン早い時期でなかなかエンジンがかからなかったマークセンが、今季シニア第2戦、自身としてはシニア開幕戦での優勝を飾ることができたのだった。

「今回はタイ選手3人同組でプレーしたのは日本では初めて。ウィラチャン、スリロットはパットでスコアを作るのですが、タイで今季3勝を挙げているスリロットが勝つかなとか、トップ3をタイ選手で占める可能性もあると予想しながらプレーしていました」と振り返るが、風の強い中でマークセンは自分のプレーだけを信じた。そしてシニア通算24勝目とひとつ勝ち星を積み上げ、新しい記録を達成した。

鉄人も今年1月で59歳。最近は年齢による衰えも気になってきたという。「昔はドライバーで290~300ヤード飛距離がありましたが、今は少し飛距離が落ちた感じ。だからというわけではないですが、自転車をこいだり、ストレッチするとか、やりすぎると負担がかからない程度にトレーニングはしています」と普段の取り組みを話している。

マークセンの母国タイのこの時期は旧正月(ソンクラーン)で暑期にあたり、連日蒸し暑さが続くという。日本の箱根は涼しい気候だったことも、マークセンにはプラスに働いた。「大好きな日本に戻ってくるのが待ち遠しかった。タイでは日本食レストランにも何度か通ったくらい。日本の素晴らしい気候とゴルフ場でプレーができることは幸せですし、とても嬉しい気持ちになります」と日本の話には自然と笑顔がこぼれる。
「まだシーズンは始まったばかり。次戦以降も、いつも通りベストを尽くせば優勝のチャンスがあるかもしれません」と試合功者のマークセンは前を向いた。

マークセンに2打差をつけられ通算5アンダー、単独2位で大会を終えたウィラチャンは「あと一筋のパッティングがきめられず、今日は残念でした」と振り返る。「思っているよりも風が強くて、パッティングの時に身体が持っていかれてしまったんです。自分では良いところに打てたと思っても、風の影響を受けました」と2019年の日本シニア賞金王も苦しんだ様子。
「キャディをしてくれた奥さんには不安と緊張させてしまって、ストレスになってしまったかな。今度は安心させたい」と、次戦は”すまいーだカップ”の歴代チャンピオン(2021年)として挑む大会でリベンジを誓った。

