
新規大会のシニア開幕戦「ユニテックスシニアオープン」最終ラウンドが、兵庫にある宝塚クラシックゴルフ倶楽部(6,483ヤード/パー71)で行われ、4アンダー首位からスタートした片山晋呉(52)がスコアを3つ伸ばして通算7アンダーとし大会初代チャンピオンに輝いた。昨年5月の「すまいーだカップシニア」に次ぐシニアツアー2勝目を完全優勝で飾った。優勝賞金500万円を獲得。5アンダー2位に久保谷健一(53)とデービッド・スメイル(54)、3アンダー4位にシニアルーキーの岩本高志(50)が入った。

最終日、宝塚クラシックの上空は強い寒気と湿った空気の影響で、朝スタート時には気温が一桁台まで下がり、選手は冬用の服装に身を包んでスタートした。北風も勢いを増し、体感温度は時間を追うごとに下がっていった。さらに「気まぐれな春風が吹き付けるこの時期は、コースの難易度はさらに上がる」とコース関係者は言う中で、「ティーとセカンド、グリーンで風向きがバラバラ」と選手は頭を抱える季節の代わり目でもあった。
片山晋呉も同様にニット帽に冬用のセーターといういで立ちで、最終組スタート前のギリギリまで、丹念にそして最後の最後までパッティングの感覚を研ぎ澄ませていた。
1番スタートホール(パー5)はセカンド210ヤードから2オンに成功し、8メートルのイーグルパットをジャストタッチでカップイン。続く2番(パー4)では、グリーン左サイドにこぼれたアプローチを7番ユーティリティで転がして入れ込んだ。ゲームが始まって間もなく2ホールでスコアを3つ伸ばし完璧なスタートを決める。5番(パー5)でもバーディを重ね、後続と4つ差をつけてバックナインへ。時折みぞれが降る空模様だが、片山の集中力は切れることが無く、穏やかにプレーが進んでいた。

後半は難易度の高いホールが続き、OBとバーディで逆転も想定されるので決して油断はできない。片山の苦手とする12番は本日最難易度のホール。グリーン右手前ライの悪いエリアから寄せられずに本日初ボギーとしたが13番(パー5)でバウンスバックに成功。同組の久保谷もバーディを決めて片山との差は残り3ホールを残して3打差だった。
片山は16番をボギーとして久保谷との差は2つ。そして難所の17番パー3も切り抜け、最終18番では8メートルのパットを確実に寄せてパーセーブに成功。終わってみれば"永久シードプレーヤー片山晋呉"が初日からの首位を守り切る「完全優勝」で締めくくった。
「やっとできましたね、シニアに入ってから相手が嫌がるゴルフというのがね。なんでできないんだろうというのがあったんですが、このオフの間に自分が出来ることをやったのが、結果になりました」と片山は胸をなでおろした。

1番スタートホールで沈めた8メートルのイーグルパット、そして2番はグリーンサイドから7番ユーティリティで転がしてバーディ奪取と一流プロの見せ場を作った片山。それはオフシーズンに宮崎で合宿を行い、自分の磨くべき技の精度を上げてきた”猛練習”が結果につながった。
最後まで落ち着いたマネジメントの裏には、昔からよくプレーをして馴染みのあるコースという要素もある。「関西に来たら、いつもここに来ていたんですよ。60年前に開場した頃、このエリアにコースを造成したことが凄いと。佐藤儀一さんの手がけたコースは本当にゴルフが好きで勉強している、出来栄えが素晴らしいなって思っていて。特に14番のショートは、作りがオーガスタの真逆になっているんですけど素晴らしいホールで、最高のストーリー性があるんです」としみじみ語る。名匠のコースで攻め方を知る片山は、コースマネジメントを冷静に判断し虎視眈々とゲームに集中できていた。

それに加えて「今回のパターは、メルカリ(ショッピングサイト)で3800円、送料入れて5000円で購入した20年前のモデルなんです。優勝賞金の500万円に代わりましたね」と打ち明けた。購入したのはオデッセイ「WHITE STEEL SRT tri-ball」というモデルで、実は中古で3本入手。最初に使ったときから良い感じがしていたといい、この冬はずっとこのパターとの相性を確かめ、その中の1本を選択して開幕戦での戦いに準備を重ねてきたのだ。「昔のパターの方が軽いんですよ。今はどんどん重くなっていて、それにつられていたのですが、今回はその選択も良かったんでしょうね」と分析する。
「片山晋呉らしいゴルフでしたね」と優勝インタビューで聞かれ「これまでの経験値、そして精神的に落ち着いてできたことです。イーグルスタートでも冷静でしたし、このコンディションではボギーの1つ、2つくるのはわかっているので、あまり気にしていなかったです」と振り返った。
そして「シニアツアーにようやく慣れてきましたし、非常にやりやすくなってきました。自分のしなきゃいけないことも分かった中で挑めた大会でした。今年は海外シニアメジャーに3試合参戦する予定です。シニアで世界の頂点に立って、その景色を見てみたい」と目標も明快。
シニア開幕戦は片山が主役だった。今季シニアツアーも片山がけん引することは間違いないだろう。
