プロゴルファーが参加者と一緒にゴルフを楽しみ、心技体を高めあうPGAの社会貢献活動のひとつ『2024 PGA HANDA CUP ・フィランスロピー障がい者ゴルフ大会』が11月12日、東京にある若洲ゴルフリンクスで開催された。競技は上下肢・聴覚・内部・視覚(全盲・弱視)に障がいを持つ93名が7つの部門に分かれ、18ホールストロークプレーの新ぺリア方式による個人戦で競われた。
PGAがプロと一緒に大会を作る障がい者ゴルフ大会は1999年からスタート。国際スポーツ振興協会との共催は17回目。出場選手全員にいきわたる賞品の数々は日本ゴルフ用品協会、サッポロビール株式会社からご協力をいただき、出場選手のモチベーションを高めるものになっている。
朝6時30分のゴルフ場オープン時間には、すでに大勢の参加者が入口で開催を待ちわびている。受付は7部門に分けられ出場の手続きをする。朝7時20分から変則ショットガン形式で部門別にスタート。当日は雲が広がる空模様だったが、時折太陽が顔を出し、選手は汗をぬぐいながらプレーを楽しむ姿が見られた。
大会ではPGA会員がプレーのサポート役として、ラウンドレッスンやスタート説明、アテストのサポート業務に携わっている。今年はプロゴルファーのサポートスタッフ42名と学生ゴルファー13名が会場に集結。選手と一緒にゴルフの魅力を味わい、ゴルフを楽しむ様子が伺えた。会場にはご協賛をいただいたサッポロビールより、千葉工場や物流部門グループ会社の方々が運営サポートしていただき、選手へ飲料を提供していただくなど、大会の盛り上げに力添えをいただいた。
また表彰パーティーでは日本プロプロゴルフ協会より明神会長、若洲シーサイドパークグループ大路支配人、サッポロビール千葉工場の榎工場長にもご列席いただいた。
◇ 大会成績は こちら>> ※PDF
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プロサポートスタッフ42名の中には、20回以上も参加を続けている会員がいれば、初めて参加するという会員もいる。初参加で全盲の部のラウンドサポートにつくことになったのが栃木から来た橋爪晃彦会員だ。
父・信彦、兄・輝彦、弟・光彦と家族全員がプロゴルファー一家で育ち、ゴルフ上達に向けた研究や情熱はだれよりも強い。「あるシニアプロの方のレッスンにまつわる記事で『ボールを良くみましょう』って教えていたのに、全盲の方のゴルフを知ってからは『ボールを良く見ましょう』と言わなくなったと書かれていたのが印象に残っていました。だから今回、実際にどのようなプレーをされているのかを知りたかったのです」と参加のきっかけを口にした。
「ボールを良く見る必要があるのは、アドレスの前に後ろから方向を確認したり、アライメントを取ったりするプロセスの中で必要なこと。確かに、打つ時にはボールを見る必要は無いんですね。選手のみなさんが、明るく楽しくゴルフに取り組まれている姿をみて、ゴルフは全身で楽しむスポーツだと再認識しました。全盲の方とご一緒できて良かったです」と表情も明るい。
「ブラインドのスポーツはいろいろと参加できるようになってきましたし、理解も深まってきたように思います。取り組みの中で上手くいかないことは、健常者もハンディキャッパーも同じだけある。だからこそクリアするための方法を探して、楽しく乗り越えていくのがスポーツなのですね」。小学2年の息子にも今回の経験を伝え、新たな気持ちでスポーツに取り組んでもらうのが親の気持ちでもある。
新規参加で上肢のプロサポートに携わり、多くの学びがあったというのが2024年にティーチングプロ会員として入会した古村俊貴。古村は先天性の右手四指欠損で、ゴルフクラブは左手で握り、右手で押さえるというゴルフスタイルを持っている。
「みなさん、自分のできる現状の中で、最大のパフォーマンスを見せてくれました」と参加後に一日を振り返った。「手足が有る、無しは関係ない。自分ができる範囲で、みんなで同じゴルフをする、カップインを目指すことが、こんなに楽しいことなんですね」と目を輝かせた。試合中は同じ上肢部門の3組に同行し、テクニックやアドバイスをしながらプレー進行のサポートに徹した。「補助具を装着してプレーする姿は参考になりました。それぞれが補助具を工夫していましたし、それも見ていてみなさんが明るい。一日楽しませてもらいました」と大阪から駆けつけた甲斐もあったようだ。
「すでにみなさん、それぞれの型ができていました。スイングのアドバイスだけでなく、ゴルフへの取り組み型とか、そういう部分でこれからゴルフの参考にしていただければプロ冥利につきます」。初めてのプロサポートで、古村はじめプロゴルファーが確かな収穫を掴んでいるだろう。大会に携わったPGA会員それぞれが、今後のレッスン活動において、老若男女問わず"楽しいゴルフ"を伝え続けていただきたい。
来年はデフリンピックが日本で開催される。世界中から一流アスリートが集結するスポーツの祭典であり、2025年11月15日から26日までの12日間、世界70か国以上の選手約6000人が集まるという開催も待ち遠しい。ゴルフ会場に指定されたのが、本大会開催コースでもある若洲ゴルフリンクス。今回は聴覚障害部門32名が出場し、グロスで70台を出すなど、大会のレベルも確実に上がっている。デフスポーツ、そして障がい者大会がますます盛り上がるはずだ。