首位の宝力寿教とは一打差のイーブンパー2位で初日を滑り出したのが小高猛(こだか・たけし)、64歳。プロ資格を取得したのが45歳という、遅咲きティーチングプロが初優勝を狙える位置についた。
小高は10番(三の丸)からスタート。ゲームはパーを並べて進行し、15番ではティーショットが右のバンカーのヘリにつき、レイアップを余儀なくされてボギー。前半は我慢も続いたが「組についたハウスキャディさんが、グリーンリーディングがばっちりだったんですよ。だから安心してラインを任せていました」と振り返る。
後半は1番(本丸)パー5で「キャディさんが、僕のビビりな性格も含めてラインを読んでくれた」と初バーディ奪取に成功。3番では3メートルほど残ったボギーパットを「キャディさんの読みに従った」ときっちりと沈められたことで「パッティングが合い始めた」とボギーパットでも大きな収穫を得た。8番でもバーディを重ねて、第1ラウンドを堂々の2位で好スタートを切ることができた。
「雨が止んだ瞬間からスタートしたこともラッキーでした」と小高。「レインウェアを着なくてよくなりましたし、寒さ対策用にちゃんと薄手のアウターをたくさん用意していましたから」と準備万全で大会に挑んでいる。
45歳でティーチングプロ資格を取得するまでの道のりには、いろんな伏線があったようだ。大学時代はテニスに没頭し、スポーツクラブでバイトをするうちにテニスコーチとして資格を取得するまでに至った。卒業後はスポーツクラブに勤め、スカッシュをはじめジム、トレーナーと業務全般に携わり、千葉県我孫子にあるフィットネスクラブの支配人まで任されるようになった。
移動したタイミングで新設されたのがインドアゴルフ。クラブをいったん握ると、テニスの時に味わったスポーツならではの面白さがよみがえり、ゴルフにのめり込んだ。「ゴルフを教える仕事ができないか」と練習場連盟に登録しテストを受験。フィットネスクラブで“アシスタントゴルフプロ”という資格を掲げて活動を始めた。
しかしゴルフ熱は収まらない。「もっとゴルフをやりたい、それならPGAを目指そう」と42歳の時にスポーツジムを離れると決断し、ティーチングプロの資格取得に専念。見事45歳でティーチングプロに合格できたのは、ゴルフの魅力に取りつかれた以外に他ならない。千葉県市川市にある大門通りでインドアゴルフ施設「市川ゴルフアカデミー」をオープン。紆余曲折を経て、来年4月には開店から10周年という節目を迎えるまでに至った。
「大学を卒業してからレッスン関係の仕事に携わっていたので、ゴルフを教える仕事はすんなり入ってきました。独立して良かったですし、ゴルフが楽しい」と小高は充実した日々を送っている。レッスンに取り入れているのが「MyParGolf(マイパーゴルフ)メソッド」だ。
メソッド提唱者の吉澤昌也とはティーチングプロ合格同期であり、技術メソッドよりもゴルフをゲームとして捉えるという方向性が一致しているという。「ティーチングプロアワードで優秀賞受賞した考え方です。ゴルフはスコアカードからゲームの弱点を分析し、そのゲームを強化すれば、スコアアップにつながります」。マイパーの取り組みがあるから、レッスンの醍醐味が深く、そして面白味を増している。
最終日、最終組でのプレーに「お客さんがね、この大会の成績を見てくれていると思います。下手なプレーをしないようにとプレッシャーはありますが、モチベーションの維持にはつながります。最後まで自分のゴルフを楽しみたい」と小高は口元を引き締めた。