「コスモヘルスカップ シニアゴルフトーナメント」で優勝した増田伸洋以上に喜んでいた男がいる。増田と宮本勝昌が一進一退の攻防を繰り広げた最終組の1つ前で回った鹿志村光一だ。17番、18番を連続バーディで締めて、増田と宮本に次ぐ単独3位でフィニッシュ。これにより賞金ランキング30位以内のシード権を確定させた。2001年にプロ転向した鹿志村にとって、これがレギュラー時代を通じて初シードとなる。
実は、前週の「福岡シニアオープン」が始まる前まで、鹿志村は9試合を終えてトップ10がなく、シード圏外の賞金ランキング61位(201万2531円)に沈んでいた。福岡シニアオープンでは自己最高位となる2位タイに入り、250万円を加算して賞金ランキングはシード圏内の29位まで急上昇。そして今週は単独3位で150万円を上乗せし、獲得賞金は2週前の約3倍となる601万2531円となり、わずか2週間で39人を抜いて22位まで上がってきた。シーズンは最終戦1試合を残すのみで、もう9人に抜かれる心配はない。
この2週間の好調を支えているのがパッティング。きっかけは2戦前の「ファンケルクラシック」まで遡る。2日目に鹿志村はパットの名手、谷口徹と同組で回り、ホールアウト後に「パターを教えてください」と頼み込んだ。
「僕は下から打っているのを、ちょっと上からみたいな。俺はそんなイメージで打っているよ、と教えてくれたんです。僕はオデッセイのパターを使っているんですけど、白いインサートが上を向くのが早すぎた。谷口さんはワンテンポヘッドが上がるのが遅い。だからフェースインサートが自分からなるべく見えないようなイメージで打ったら、コロがりが良くなって、ある程度思ったところに出るようになった。谷口さん様々でございます」
そして今週は心強いキャディが鹿志村をサポートしていた。2020年まで会場の鳩山カントリークラブに所属していた相磯太一(あいそ・たいち)が、アクセルを踏みたがる鹿志村に対してブレーキをかける役割を果たし、初日も2日目もボギーは1つずつ。「グリーンに乗せるポイントも明確で、僕は何も考えないで言われたとおりにプレーしていました。2、3回言うこと聞かないときもありましたけど(笑)。彼があっての3位です」と鹿志村は感謝する。
鹿志村が55歳、相磯が46歳と年齢は9個違うが、同じ神奈川県出身で、鹿志村は法政二校の野球部、相磯は桐蔭学園の野球部と、ともに甲子園出場経験のある強豪校出身で馬が合うようだ。相磯が「アイアンショットが抜群で2日間でグリーンを外したのが3回くらいしかない」と振り返ると。鹿志村は「ドライバーを曲げたのは昨日と今日で5回くらいかな」とうなずく。それに対して『ショットが良かったんですね』と尋ねると、2人は「よかったですね」と同時に答える。こんな具合だ。
好調なショットに、谷口に教わったパッティング、コースを知り尽くした相磯のマネジメントが合わさり、見事にキャリア通じて初めてのシードをつかみ取った。「あんまり実感は湧かないですけど、努力していればいつかは実るのかなと思いながらやっていました。残りの人生も少ないので、長い時間こういうところでプレーを続けたいと思っています」。表情だけでなく185センチの大きな体から喜びが溢れていた。