前週の米シニアツアーのプレーオフシリーズ第2戦「シモンズ・バンク選手権」(米アーカンソー州・プレザント・バレーCC)で3位タイに入り、次週の最終戦「チャールズ・シュワブ・カップ選手権」(米アリゾナ州・フェニックスCC)に進むと同時に、来季のフルシード権を手にした藤田寛之。今週火曜日に帰国し、明日から開幕する「コスモヘルスカップ シニアゴルフトーナメント」(埼玉県・鳩山カントリークラブ)に出場する。
体のことを考えれば、米国に一週間とどまっていた方が良いのは本人も分かっている。本人は時差ボケとも闘いながら、「この試合にエントリーしていたから帰ってきました。こっちの都合で急きょキャンセルするのは失礼な話だから、これを出てもう一回戻ります」と平然と話す。土曜日の最終日をプレーした後、一度家に帰り、月曜日に再び渡米する予定となっている。
米シニアツアー出場権が視界に見えてきたのは、6月の「全米シニアオープン」で単独2位に入ったのが始まりだった。ポイントランキング72位までが米シニアツアー、PGAツアー・チャンピオンズのプレーオフシリーズ第1戦「ドミニオン・エナジー・チャリティクラシック」に出場することができる。藤田は全米シニアの2位で大きくポイントを稼ぎ、同ランキング45位につけていた。
その第1戦は43位タイで、ポイントランキングは45位から51位に後退。それでも同54位までが出られる翌週の第2戦に駒を進めた。「ランクが6つも下がって、スタートから考えると厳しいと思っていました。でも確率はゼロじゃない。相手もいることですから、単独2位ならOKという感じでやっていた」。最終戦に進むためには第2戦を終えて36位以内に入らなければならない。他の選手のポイントに関係なく、それを達成するのは優勝か2位しかないという状況だった。
初日から好スタートを切った藤田は、首位と2打差の3位タイで最終日に進む。一時は2位に順位を上げたものの、17番のボギーで一歩後退。最終18番グリーンでは3位タイだった。2メートルの下りのバーディーパットを残しており、「(最終戦進出へ)1打足りなかったら最後はバーディを獲らないといけない。でも超下りだったので狙いにいけば3パットのボギーもある」。藤田は選択を迫られることになる。
そこで、2021年から藤田のエースキャディを務める小沼泰成さんに確認すると、「いや、パーでも行けそうです」という答え。リーダーボードには大会の順位の他に、その位置で終えたときのポイントランキングも表示されており、3位タイでも最終戦へ進出できることが分かったのだ。難しい下りのパットを「超バントして(笑)」、30センチに寄せパーでフィニッシュ。最終戦進出と同時に来季のフルシード権を決めた。
「出られる試合には全部出たい」。来季の米シニアツアーは28試合が予定されているが、藤田のカテゴリではかなりの試合に出られる見込み。来年1月のハワイでの開幕戦は、直近2年間の優勝者やメジャーチャンピオン、ツアー5勝以上の選手しか出られないが、2月のモロッコ戦から出場する予定でいる。
米シニアツアーは多いときは月に4試合あることから、「知り合い関係、全米へのアクセス、練習環境、治安とかの住環境も含めて、テキサス州のダラスに拠点を置くつもり」。キャディの小沼さんと英語が話せるマネージャーの杉浦翔晟さんと自炊しながら、3人で転戦する計画を思い描いている。
藤田の今年だけの成績を切り取れば、米シニアツアーではわずか5試合の出場で2位1回、3位1回。20試合を超えるフル参戦となれば優勝を期待してしまうところ。過去には、1992年~2010年まで参戦した青木功が通算9勝を挙げており、13年の「全米プロシニア」ではスポットで出場した井戸木鴻樹が日本勢初のメジャー優勝を達成している。
「期待は大いにしてもらっていいですよね。でも行ったら分かるんですけど、まあまあな人間ばっかりなので、そう簡単ではないところもあるでしょうね」。米シニアのポイントランキング上位にはアーニー・エルス(南アフリカ)やパドレイグ・ハリントン(アイルランド)ら歴代メジャー覇者がひしめく。
「シードとかいちいち考えずに、一年間チャンピオンズツアーを思いっ切り楽しむ。それで良い結果がついてくればいいじゃないですか。人生楽しませてくださいよ」と楽しそうに笑顔を浮かべる。『Hiroyuki』は外国人には発音しづらいため、『Fuji』と呼ばれることが多い男が、新たな山に向かって歩み出した。