『シニア入り8年目になりますが、まだまだ若さで頑張ります!』。PGAプロフィールページにある自己PRに書かれたひとこと。この言葉通り、5バーディ・1ボギーの「68」をマークし首位発進を決めた58歳の鈴木亨。「スコアとしては納得ですね」と笑顔を見せる。しかし「1番でいきなり1メートル半ぐらいのバーディパットを外して、ちょっとバーディが来る前にドキドキしていた」とパットに不安を感じていたが、3番パー5でバーディを先行させた。
「ティショットがフェアウェイにずっと行っていたので、3回ぐらいしか外れなかった。そのうち2回がロングなので比較的少し安定していましたし、回りやすかったですね」とティショットの安定が好要因。チャンスにつける回数も比較的多く、ボギーも1つで終えた。「でも、難しいですよね」と苦笑い。というのも、総飛距離は2012年日本プロシニア(東条の森CC東条C・7237ヤード)に次ぐ長距離で7102ヤードと長いことや、コースレイアウトがスネイクしていたり、馬の背で狭いホールなどもあり、ラフに入るとグリーンを狙いづらい。フェアウェイにボールがあるかないかで、スコアが動くようなセッティングに選手は苦戦する。
そのなかで3回しかフェアウェイを外さずにスコアをまとめた鈴木は、前戦の「日本シニアオープン」である心境の変化があったという。「シニアオープンのときにね、とりあえず出だしこてんぱんにやられて」と25センチの長さにセッティングされたラフに苦しみ、予選ラウンドの2日間で4オーバーを叩き、ギリギリの予選通過となった。
「3日目の後半ぐらいから、(目標を)タイトに決めて、そこに打つんだっていう集中力というのかな」とここ最近は狙い目を大きく見ていたが、的を小さくしたことで3日目のバックナインではティショットが落ち着きを取り戻し、2バーディを奪った。
「少し言葉悪いけど、“シニア慣れ”していたというか…」。レギュラーツアーに出ていたころに比べると、スコアへの執着心が少し低下していたことに気づいた様子。
「ふつうの試合ってそこまでフェアウェイも狭くないし、ラフも深くないじゃないですか。うん、なんとかなるしね…。レギュラーから来たひとはそんなに感じなかったかもしれないけど、自分はすごく感じて。これはダメだなって。本当に集中してあそこに打つんだということを思い出した」とマネジメントの部分をシビアにしていた“あの頃”を思い出したことで、日本シニアオープンの翌週のプロアマ戦で「64」で回り優勝。「そこから兆しがあるなと思ってここに来た」と前戦からアップグレードされた“鈴木亨”がここにいる。
シニアツアー8年目になるが、シニアメジャーでの優勝は1度もない。シニアデビューとなった2016年の今大会では3位タイ、17年と18年と2位タイ、20年は4位タイなど優勝争いをする大会もあったが悔しさが残る結果で終えている。「日本プロシニアというのは、シニアに入ってきたばっかりのとき、苦い思いを3、4年続けているので。そういう思いはやっぱりある」と、それからは毎年リベンジを意識していた。そして、ゴルフへの考え方もブラッシュアップされた今週に好スタート。念願のシニア日本タイトル獲得へ一歩前進となった。
決勝ラウンドに好位置で進めるためにも、「集中してあそこに打つ」というマネジメントを徹底していきたい。復活した“鈴木亨”に注目だ。