シニアツアーのデビュー戦となった2023年大会で、シニアプロゴルファー日本一に輝いた愛称“タマちゃん”のタマヌーン・スリロット(タイ)。20年にPGAトーナメントプレイヤーの資格を得るも、新型コロナウィルスの影響で日本で戦うことができなかったが、念願の日本ツアー初出場で公式戦Vを飾った。
連覇がかかるスリロットだが、本人は意識せずに自身が発揮できるパフォーマンスに集中していくようだ。「昨年は初出場でチャンピオンになったということですけど、それは意識せずに。今回もチャンピオンは追いますけど、力まずにいつものプレーを心がけたいです」。というのも、前戦の「日本シニアオープン」でラフが約25センチと長く、ボールがしっかり埋まってしまうほど深かった。ラフに入れば出すことだけでせいいっぱい。その影響で「ちょっと痛めている。その辺も含めて安全運転で行きたい」と痛めてしまった右ヒジもあり、「なるべく安全なプレー」を意識して、まずは予選通過を目指している。
04年はレギュラーツアーに出場しており、“日本が好き”という思いから、シニアになっても日本で戦う願望をもっていた。念願の日本シニアツアーのデビュー戦で初優勝を飾り、3年間のシードを獲得。スリロットにとって大きな一歩となったのが昨年大会である。初シード選手として迎えた今シーズンは7試合中トップ10入りが4回、今季初メジャーでは右ヒジの痛みもありながらも4位タイで終えている。しかし、「今年の前半は少し思うようにスコアは出なかった」と納得はいっていない。それでも「それも1歩1歩じゃないですか。慌てることなく3年を有効に使いたい」と前向きに捉えている。
今大会の会場はシニア世代が親しみをもつウルトラマンの巨大フィギュアや、プロアマ戦の2日間は父、母ら4体のウルトラマンファミリーが姿を現した。「タイでもテレビとか映画でやっていたので、馴染みはあります」とウルトラマンを発見すると記念撮影をし楽しむスリロットの姿があった。「空いた時間はウルトラマンに接することができて、ある意味“エンジョイ”しながら挑めるんじゃないかなと思います」とメジャーではあるが、幼いころにテレビで見ていた“正義の味方”にテンションが上がっていた。
今年は本格的に日本のシニアツアーで戦うのは1年目。「プレイヤーのひともギャラリーの人も非常に親切にしてくれるので、トーナメントも楽しくプレーさせていただいています。ホテルも過ごしやすいし、食事も日本食が好きだから生活は満足している」。母国のタイの試合では、日本ほどギャラリーがいないこともあり歓声や拍手はスリロットのパワーとなっている。ちなみに日本食では「かつ丼」が一番好きな食べ物と満面な笑みで話していた。
「ギャラリーにプレーで楽しんでいただけるように一生懸命やります」。大好きな日本の地で、また日本のギャラリーから大きな歓声を浴びるためにも、自身がスタートを切った思い入れのある大会で今季1勝目を掴みたい。そのためにも、この日は右ヒジの悪化を防ぐためにアプローチとパッティングの練習で会場をあとにした。