50歳から出場できるシニアツアーには夢が詰まっている。宮本勝昌や片山晋呉のように「今だったら勝てる」と、国内シニアツアーを足がかりに、米シニアツアーを目指す者。もしくはレギュラーツアーでは出場がかなわなかったり、なかなか成績が出なかった選手が、シニアツアーで活躍し定着することだ。
今年の2月に50歳の誕生日を迎えたルーキーの内田勝也は後者。3月に行われた「PGAシニアツアー予選会・最終予選」を8位で通過して、今シーズンの出場権を得た。次週の「日本シニアオープン」を除く12試合の出場が約束されている。これまでレギュラーツアーの出場経験はなく下部のABEMAに年間5試合程度出るくらいだった。
生活の基盤はレッスン。週に4日インドアでレッスンを行い、週に1、2回ラウンドレッスンに行くと、自分のために練習する時間はわずかしかない。「試合に行ったときだけ練習して頑張るみたいな感じ」で過ごしていた。
それが最終予選会を突破したことで生活は一変する。レッスンをセーブして自分の練習時間を増やし、トレーナーを帯同して体のケアに気を使うようになった。「肩甲骨がすごく硬くて、今年3月の最終予選の時は右手が小指までしびれていたんです。ストレッチをしたらしびれもなくなって、体が楽になしましたね。今までと違って体が動いてくれる」。
試合にも徐々に慣れてきた。開幕から5試合はすべて2ケタの順位だったが、6戦目の「コマツオープン」では初めてのトップ10入りとなる9位タイ。「今までの最高順位なのでうれしい」と話す。また、良い順位で回ったことで、大会2日目にはレギュラーツアーで優勝経験のある横田真一、塚田好宣、兼本貴司と同組でプレーし、大いに刺激を受けた。
「兼本さんは日本でもトップのショットーメーカー。ストレートにボールの芯とクラブの芯をダウンブローできれいに当てて、きれいなスピンが入って、本当にきれいな球だった。自分とは球質が全然違う。兼本さんみたいな球を打つ人とラウンドしたことがなかったので、すごく勉強になりました」。
試合をこなすごとに顔と名前を覚えられ、「先輩たちもみんなやさしくて声をかけてくれる」と居場所もできてきた。同じツアールーキーのすし石垣や山下和宏とは、ツアーに参戦したことがきっかけで仲良くなった。さらに、「みんな上手いので、つられてプレーできているような感じ。自分も打てるんじゃないかと思う。思ったよりも良い感じでゴルフができています」と、成長を実感している。
現在までに獲得した賞金は307万8249円(23位)で、まだツアーだけで生活するのは難しい。「まずはシードを獲って(賞金ランキング30位以内)、この場所に居続けたいと思っています」。ようやく手にした刺激的で楽しいツアー生活を1年で終わらせる気はない。