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〔コマツオープン/FR〕最後のアプローチは瓜二つ!? 平塚哲二は30年前に師匠が勝った大会でシニア初優勝「感慨深いものがあります」

2024年09月07日
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「コマツオープン」は全日程が終了。トータル10アンダーでトップタイから最終日をスタートした平塚哲二が、6バーディ・1ボギーの「67」で回り、トータル15アンダーでシニアツアー初優勝を挙げた。

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番までトーナメントをリードしていた片山晋呉は、1オン可能な13番パー4でティショットを左のレッドペナルティエリアに打ち込み、ダブルボギーで後退。16番パー3のバーディで追いつくも、最終18番パー5でも左にOBが出て、トータル13アンダーで3位に終わった。トータル14アンダーの2位には、歴代覇者のプラヤド・マークセン(タイ)が入っている。

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OB杭が近い小松カントリークラブで平塚が心がけたのはフェアウェイキープ。「毎年OBばっかり打っています」と昨年大会は3日間で一度もアンダーパーがなく、トータル3オーバー・63位タイに沈んだ。その反省を活かして今年は作戦を変更した。

ティショットではドライバーを持つ回数を減らし、ドライバーを持ったときでもフルスイングの67割の力加減で「OBを打たないように、ボギーを打たないように」キャリーを235240ヤードに落とす。2オン可能な5番パー5でも3日間ともティショットは3番ウッドで刻み、3打目勝負に徹した。終わってみれば初日からトップを譲らない完全優勝を達成し、大会を通じてボギーはたったの2つ、OB1つもなかった。

それでも最後まで「優勝はまったく考えてなかった」という。「シンゴ(片山)が途中まで良いゴルフをし過ぎていたので、もう(自分の優勝は)ないなと思いながらプレーしていました。でも上位には入りたいから、とりあえずしがみついてボギーを打たないゴルフはしたいなと思いながら来ました」。

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片山は前半で4バーディを奪い徐々にリードを広げていく。ピンチらしいピンチもなく、まったく隙がないゴルフを展開していた。平塚は首位の片山とは2打差の2位で、1オン可能な297ヤードの13番パー4を迎えた。ここで初めて片山のティショットが乱れる。ドライバーで打ったボールは左のレッドペナルティエリアへ。片山はドロップゾーンからの3打目もグリーンに乗らずダブルボギー。右のラフから2メートルに寄せてバーディとした平塚が単独トップに立った。

その後、片山が16番パー3をバーディとして、トータル14アンダーで2人が並んで、最終18番パー5を迎えた。同じ最終組で回るトータル13アンダーのマークセンも、イーグルなら追いつく可能性があった。ここまでフェアウェイキープに徹してきた平塚は迷っていた。

「絶対にシンゴはバーディを獲ってくるから、一か八か思いっ切り振ったろうかと心の中では思っていた」。先に打った片山のドライバーが今度は左のOBゾーンに消えたのを見て、「ちょんと打とうって(笑)」と、すぐさま考え方をチェンジ。緩まないようにバックスイングを小さくしたボールはフェアウェイを捉えた。

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最終日のピンは左の奥。「グリーンは左奥から傾斜が来ているので、絶対に左に外したらダメ。右サイドのバンカーは許容範囲で、それを越えて乗れば2パットでいく自信はあった」。グリーンの右サイドを狙った2打目は、つかまらずにグリーン右のラフに外れた。その瞬間、「あっちからなら真っすぐで寄るな」と平塚は確信していた。

マークセンは2オンに成功。もしそのイーグルパットが入って、平塚がパーならマークセンの優勝となる。最低でも寄せワンのバーディが必要だった。右サイドのラフから左奥のピンまで足が使える状況だが、突っ込み切れないとショートする危険もある。そのおよそ35ヤードのアプローチはやわらかい弾道を描いて、カップに吸い寄せられるように20センチにピタリ。グリーンを取り囲んだギャラリーとプロたちから大きな歓声と拍手が巻き起こった。

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このアプローチには伏線が2つある。「3050ヤードの距離感が全然合わなかったので、コースには関係なく重点的に練習したいたんですよ。このくらいが30ヤード、このくらいが40ヤードってバックスイングの大きさを確かめながら。それも生きたと思います」。

そしてもう1つは、直前にプレーした14番パー5。「ラフからのアプローチが同じシチュエーションなんですよ。その時は30ヤードちょっとで、35ヤードくらい打ってオーバーしたんです。同じ打ち方をしたらちょうど寄るかなと思いました」。最後の18番で見事に伏線を回収した。

結局、マークセンのイーグルパットは外れ、平塚の優勝が決まった。「勝ってしまったという感じです(笑)。一生懸命真っすぐ打って、何とかして1つでも良いスコアで上がりたいという気持ちでやっていたので」。本人はそう淡々と振り返るが、マークセンが外した瞬間、キャディが先に泣き出した。

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レギュラー時代から平塚のアプローチの上手さには定評がある。ウイニングアプローチが寄った瞬間に18番グリーンで見ていた横田真一は「平塚哲二の真骨頂」と言った。その特徴は、左ヒジを抜くように使うためフェースローテーションが少なく、パンチが入らないのだ。

「僕がジュニアの時に習っていた先生が、アプローチが上手くて左ヒジを抜く打ち方だった。先生は『見て打ち方を盗め』と言われていたので、真似しているうちに似てしまったと思うんです。気付いたらこうなっていました(笑)」。京都出身の平塚は小学校時代、醍醐ゴルフセンターでゴルフを習っていた。そのときの先生はプロゴルファーの太田了介で、運命のいたずらか今大会の歴代覇者(19911994年)でもある。

「僕らがいた練習場に重機(優勝副賞のコマツの建設機械)をプレゼントしていたと聞いていたので、先生がここで勝ったのは知っていて、勝てたらうれしいなと思っていた。感慨深いものがありますね」と平塚はしみじみと語る。師匠の優勝からちょうど30年後に教え子が優勝。現在85歳となった太田に、いい報告ができそうだ。

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平塚にとっては2011年のレギュラーツアー「パナソニックオープン」以来、13年ぶりの勝利となった。当時は「ビールでしたね」と頭からビールをかけられたが、今回は水やらサイダーやらスポーツドリンクを浴びてビショビショになり、サンバイザーの中は泡だらけ。「これだけ暑いところで凍えそうになったのは初めてです。でも気持ちが良いですね。表彰式の時はずっと手がくっついてベタベタしていました」と笑う。久しぶりの勝利の味はちょっと甘かった。

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