「ゴルフができる喜びです。力が入るようになった喜びです」。そう語るのは「コマツオープン」の初日に6バーディ・2ボギーの「68」で回り、トップの2打差の4アンダー・3位タイと好発進した渡部光洋。実は6月に出場した「スターツシニア」のあと、緊急手術を受けて3週間入院していたのだ。
「39度8分まで熱が出て、病院に行ってもコロナじゃないから大丈夫と言われて。最初は熱中症だと思い込んでいたんです。病院に行っても治らないので、違う病院で診てもらって検査したら即手術。盲腸が破裂して腹膜炎の手前でした」。虫垂炎は症状が進んで虫垂が破裂すると溜まった膿が腹部に広がり、腹膜炎や敗血症を引き起こすと命に関わることも。そこまで進行しなかったとはいえ、丸1カ月間、クラブを握れない日々を過ごした。
退院後、体重は12キロも減少。現在はそこから5キロ戻したが以前のようには「力が入らない」。それでも復帰後の2戦は14位タイ、17位タイとまずまずの成績で終える。試合勘とともに調子を取り戻し、ようやく昨日「久しぶりに振れる感じになってきた」。
今大会の舞台、小松カントリークラブはティショットの狙い所が狭く、OB杭が近い。飛ばし屋の渡部にとって難しいコースとなるが、「転がすくらいのイメージでドライバーを低く打ったりしました」と、初日はOBなしで乗り切った。2つのボギーはどちらもパー3で「乗らず寄らず入らずでした」と、それ以外のホールで大きなミスはない。
「ゴルフができる喜び」は今年元旦に襲った能登半島地震のあとだから感じることでもある。関西出身の渡部は研修生時代、兵庫県三木市の関西クラシックゴルフ倶楽部で過ごし、そこで阪神・淡路大震災を経験した。
そして、今週は選手全員が『We Support Ishikawa』と書かれたステッカーをキャップやウェア身に付け、プレーで能登を元気づけようと取り組んでいる。「なかなかすぐに復興なんてできないけど、ちょっとでもお役に立てればいい。ゴルフができているだけでホンマに幸せだから。そう思ってやっています」。その喜びを噛みしめるように52歳は練習場に直行した。