今季シニア第5戦「マルハンカップ太平洋クラブシニア」の最終ラウンドが太平洋クラブ軽井沢リゾート浅間コース(6,971ヤード/パー71)で8月25日に行われた。
降雨の影響で2度の中断を挟み、上位スコアが入れ替わる混戦。「シニアの部」では初日9アンダー首位スタートの伊澤利光(56)が後半でスコアを3つ伸ばして1打差を逃げ切り、通算12アンダーで大会完全優勝を果たした。レギュラーツアー16勝を挙げているベテラン選手は、19年の福岡シニアオープン以来、5年のブランクを経て、シニア2勝目を飾った。2位11アンダーにシニアルーキーの崔虎星(50)、さらに1打差3位は矢澤直樹(53)が続いた。
本大会初開催「グランドシニアの部」では久保勝美(61)が通算5アンダーで優勝。グランド優勝賞金120万円を獲得した。
レギュラーツアーでは2001、2003年と2度の賞金王に輝いている伊澤利光。第1ラウンドで伊澤は9バーディー・ボギーフリーと会心のプレーを見せ「やっぱりいーさん(伊澤)が来ましたね」とシニアの選手も口々にするほどの文句無しの実力を知らしめた。「最後の勝負はパッティング。最終日は(初日ほど)入らないと思いますけど、バーディーをたくさん獲れるようにして、優勝を狙っていきたい」とレギュラーツアー16勝を誇るベテランは、パッティングの自信を「確信」に変えつつあった。
最終ラウンドがスタートし、優勝争いの火ぶたが切られた。「昨日と比べてアイアンは乗っているけど、チャンスに付かないしフィーリングが出てこない」と前半の状況を見定めていた。フロントナインでは2アンダーからスタートした宮本勝昌と藤田寛之がバーディーを量産し上位グループに入ってきた。伊澤の最終組が9番ホールを終えたところで、コースは激しい降雨の為、競技は一時ストップがかけられた。
伊澤は「中断の待機時間で、気持ちを切らすとだめだってわかっている。プロ仲間からは『中止でもいいんじゃないかな』とか声も聞こえたんですけどね、私はやるつもりで気を抜きませんでしたよ」と首位をキープしている状況で、決してテンションを下げるようなことはしなかった。
98分の中断を経て競技を再開したのが14時30分。プレー再開後も雨は強弱を繰り返し降り続いた。しかしグリーンスピードは落ちることなく、プレーはよどみなく進行した。
4アンダーからスタートした崔虎星が前半で4つスコアを伸ばして、首位に食らいついてきた。崔が12番でバーディーを奪い、伊澤は一度首位の座を譲ったが焦りはなかった。「自信が確信」に代わったパッティングの感覚は「後半、ようやくショットが抜けてきた」とショットのギアを一段上げた。伊澤は13番でこのラウンド初バーディーを仕留め9アンダーにスコアを戻すと、強い雨風も気にならないほど、集中力を研ぎ澄ませていた。崔が16、17番で連続バーディーを重ね11アンダーまでスコアを伸ばし、伊澤は2打差を着けられたが、崔の後を追うように16番で4メートル、17番で2メートル、最終18番では70センチとバーディーチャンスを作り、上り3ホールで怒涛の3連続バーディーフィニッシュ。ウィニングパットを決めた伊澤は、洋々と両手拳を高くあげ、歓喜の雨粒シャワーを全身で浴びた。
薄暗い17時30分前に全組が完走した。伊澤は「16番あたりから暗くなりはじめて、ショットの手ごたえはありましたが、縦距離がみえなくてランディングが見えなかったですし、パッティングラインも読みずらかった」と振り返った。それでもねじ込んだ3つのバーディーパットは「勝てなくて悩んだ長い時期に、パッティング練習していた成果がようやく出ました」と、嬉しさもひとしおだ。
今年は開幕戦から最終日に良い位置でプレーができている経験も、今回の優勝を後押しした。「いつも通り、焦っちゃいけないと心がけるようにしていました。だけど最後は強い気持ちでバーディーを獲りにいきました」と優勝のチャンスをしっかりと掴むことに成功した。契約ウェアも、今年はKJUS(チュース)に一新。「中断の時に初めて新レインウェアを着ました。身体を冷やさないようにって、これが結構良いクオリティーでね。新レインも勝てた要因かな」と嬉しさをにじませる。
今季シニアツアーは13戦中5戦を終えたばかり。伊澤はこの後、シニア後援競技に出場。9月のコマツオープン、日本シニアオープンとまだまだ連戦が続く。「できるだけ優勝回数を重ねられるように頑張りたい」と一試合一試合大切にすると誓った。今年は宮本勝昌、片山晋呉のシニア2強と言われるメンバーに、新たな大ベテランが名乗りをあげてきた。
(仲の良い後輩・増田伸洋からウォーターシャワーの嬉しいおもてなし)