「フジカニ」こと富士カントリー可児クラブで日本プロ開催を待ちわびていた選手は決して少なくないはずだ。日本プロ開催決定したのは5年前の2019年7月16日。2018年に最終プロテストに合格し、2019年にPGAメンバー入りした岐阜県出身の光田智輝は「地元開催の日本プロに出場する」ことを目標に、この5年間を過ごしてきたひとりである。
自宅のある岐阜県関市からは車で40分ほどの距離だが、光田が中部学院大学ゴルフ部時代にはフジカニでキャディーバイトや練習ラウンドで世話になり、かれこれ100ラウンドはこなしているという自負がある。
光田は今年3月13、14日にフジカニで開催された日本プロ中部地区予選会に出場。77名中トップ通過を果たし、本戦への出場資格を実力で獲得していた。
念願の第1ラウンドは1バーディー・3ボギーの73で95位タイと出遅れた。それでもフジカニを良く知る光田は「スコアメイクにはつながらなかったのですが、バーディーチャンスにはつけられていましたし、パッティングも打てていたので、焦りは無かったのです」と振り返る。「ショットが良かったので確かフェアウェイキープ率は60%くらい」と、データ上でも64.286と全体では14位。自信の裏付けがあった。
それでもオーバーパーでは予選通過が叶わない。気持ちを入れ替えて挑んだ第2ラウンドは、フロントナインで1バーディ・1ボギーと足踏みしていた。コースを良く知る光田だからこそ、外してはいけない箇所や狙いどころ、安全ルートやリスク回避といったあらゆるシュミレーションを無意識に計算してしまっていた。それでも知恵と経験を信じて後半はスコアを落とすことなく、プレーに集中し続けた。
初日にボギーとした16番をパーで凌ぎ、この時点で2オーバーということは、この時点で予選通過カットラインまでは2打を縮めなければならなかった。
「後悔しないように」と気持ちを引き締めた。17番パー5ホール。集中して放ったティーショットはフェアウェイのベストポジションに落ちた。5メートルのバーディーパットがしっかりと決まってくれた。
最終18番パー4でも最高のティーショットを打ったという手ごたえがあった。グリーンオンした10メートルはあるバーディートライ。「ショートしないように」意識したパッティングはラインに乗りカップイン。上がり2ホールで連続バーディを決め、スコアをイーブンパーに戻し、光田は日本プロ予選通過を果たすことができた。グリーン上でスタンスを構え、狙いを定め、10メートルのパッティングをしている姿はTV中継でもしっかりと放送されていて「光田プロは地元の選手ですから」と紹介されたことも、見えない力が後押ししたのかもしれない。
地元でありホームでもあるフジカニで、光田は日本プロ予選ラウンド通過を果たした。「プロとしての活動をサポートしていただいている『エムズアソシエイツ』さんに、まずは決勝ラウンドのプレーを通じて感謝を示したいです」と声をはずませた。予選ラウンドでは、学生時代にキャディーをして知り合った大勢のメンバーさんがエールを送ってくれたことも力になった。光田の「M(エム)」と所属先名の「エム」は偶然にも重なり合い、ラスト2ホールで強い光をまとった。そして光田は決勝ラウンドでは感謝の念を忘れずに、堂々と戦い抜くことを誓ったのだった。