「感動をありがとう!」と書かれたプラカードの数々が羽田空港国際ターミナルの一角を待ち受けた。3日、全米シニアオープンを戦い抜いた藤田寛之が日本に帰国するタイミングを見計らい、藤田のマネージメント会社がサプライズウェルカムを企画。出国ゲートを超え「このまま日本プロの会場に向かわないと」と急ぎ足になっていた藤田は、大勢のゴルフファンが目の前に現れ、びっくりした様子だ。師匠である芹澤信雄、家族である妻の優合子さんのサプライズ登場にビックスマイルが浮かんだ。
その後、帰国会見が行われ「今、この会見が信じられないという感じです」と藤田は嬉しさをかみしめながら「昨日の大会5日目が終わってから、SNSとかでいろいろメッセージをいただくようになってきて、非常に応援が伝わるようになりましたが、終わってみて、残念ながら本当は優勝できたらよかったんですけどね。2位となってしまったんですが、自分が驚きだったのは、皆さんから『感動』という言葉をたくさんもらえて。自分は必死にゴルフをしていただけだったんですけど、そういう風に見ていただけたんだなあと思えて、それがプロとして一番うれしかったです」と笑みをこぼす。
今年の全米シニアオープンは、最後の最後まで予想しない展開が続いた。悪天候によるサスペンデッド、そして手に汗にぎるプレーオフ決戦、そして敗退。藤田はあらゆる経験を一気に味わった。「正直、残念な気持ちが一番ですね。3日目、4日目の途中まで首位だったということと、そのストローク差とか状況を考えて、勝てる可能性を感じられる状況がありました。びっくりしたのはその4日目がなくなってしまったということで、通常1日で済む、トップで迎える最終日が2回も来てしまった、ということです。しかも、2回目がショートバージョンだったということで、正直5日目はやはり硬くなってしまっていました」と振り返った。
勝利に向けた格闘は続いたという。「割り切っていったら通常通りに行けたんですけど、プレーオフになってしまって。それでもよくプレーオフに残れたな、という最終日のラウンドだったんですけど、そのプレーオフもメジャーの会場で2人だけのプレーということで不思議な感覚がありました。終わってみて、残念で悔しい思いは30分くらいで、あとはよくよく考えたらよく頑張れたんじゃないかなと思えるようになりました」と回想した。
「SNSなどを通じて、そこに感動とかありがとうという言葉をたくさんいただいて、びっくりしました。今日帰ってきて、またびっくりしています(笑)。自分はゴルフをしていただけですが、それがこうして皆さんに少しでも感動を与えれらえることができたならば、うれしいです。本当にありがとうございました」と会見を締めくくった。
帰国を出待ちした藤田の師匠である芹澤は「優勝できなかったのは残念ですけど、よく最後まで踏ん張って頑張ってくれたなと思います。ゴルフ界やUSGAでの大会をここまで盛り上げてくれてありがとう、です」と藤田の活躍を称賛した。
羽田空港のサプライズウェルカム後、藤田は4日から開幕する日本プロゴルフ選手権に向かい、翌週は「長嶋茂雄招待 セガサミーカップ」に出場予定。今月下旬にスコットランドにあるカーヌスティーで開催の全英シニアオープンにもエントリーを済ませており、55歳、藤田の挑戦はとどまるところを知らない。