熊本ゴルフ倶楽部 阿蘇湯の谷コースで16日に行われた「ドゥ.ヨネザワ企業グループカップ 関西プロゴルフゴールドシニア選手権大会」の最終ラウンド。ゴールドの部は伊藤正己(68)が2つスコアを伸ばし136ストローク通算8アンダーで優勝。伊藤には優勝賞金15万円と優勝杯、さらに優勝副賞として熊本特産物が贈呈された。
最終ラウンドは一日中風が吹き抜け、風は木々に当たり向きが変わるために読みが一段と難しくなる。コースに陽ざしが降り注いだとしても午前中の気温は13度程度しか上がらず、前日とは打って変わって手がかじかむような冷え込んだ中でプレーが強いられた。空気も乾燥し、グリーンを捉えたボールは跳ねて止まらない。難しいコンディションに選手は我慢くらべが続いた。
初日に66をマークし首位からスタートした伊藤正己は、自分でもびっくりするくらいコースとの相性の良さを感じていた。「朝から強風だったけどね、ドライバーも良く乗ったし、ピンチらしいピンチもない。自分でも不思議だったよ」と振り返った。
成績上位者が集まる最終組には特別な緊張感が漂うが、伊藤は「みんながバタバタしてるもんで、パーでしのげば何とかいける」と判断し、淡々と自分のゲームに徹したという。前半は2つのパー5でバーディーを獲り、貯金を作ることに成功。後半10番でティーショットが一度ラフに入ったが、強風の中でもショットが安定し、スコアをひとつも落とすことなく、ゴールド出場選手ではただひとりのアンダーパー70をマーク。2位とは10打差と圧倒的な強さを見せて、68歳のゴールドルーキーは堂々の関西ゴールドシニア優勝を飾った。
振り返れば伊藤のひとり相撲。それでも最終ラウンドスタート前までは「びくびくするよ。これまで何度か失敗している経験もよみがえってくるもんで」と本音も明かす。伊藤がプレシャーに打ち勝てたのはコースと抜群の相性だった。「なんだろうね、コースの立ちやすさとか、ティーショットの狙いどころだとか、自分にしっくりくる。だから短くてもドライバーをしっかり振れる自信がなぜかある」と不思議がる。それに加えて伊藤にはゲームにおける信念があるという。「やってだめなら仕方ない。打てば入るところで、ちゃんと打つこと」を意識した結果が優勝を導いてくれた。
伊藤は岐阜にある明智ゴルフ倶楽部で腕を磨いている。今年明智ゴルフ場は開場50周年を迎えるというが、伊藤はこれまで40年もの間、所属プロとして活動している。「周りのスタッフはみんなすっかり年下ばかり(笑)。だけどね社長はじめ、プレーも一緒にさせてもらっているメンバーさんの存在があるからこそ、こうしてプロとしてやっていける。これは感謝しかないです」と語気を強めた。40年という月日を経て掴んだ「ゴールドシニア」という公式戦タイトル。伊藤にとっては所属コースへ日頃の感謝を伝える最高の機会になった。
次の目標は「日本ゴールドシニアタイトル」とは、はっきり明言はしなかった。「さすがに日本となると強い人ばかりだから。だけど、こそっと頑張ります」とそこは控え目。伊藤は365日クラブを握り練習をし、出来る範囲でウォーキングや水泳も取り入れ体力をキープするまさに鉄人。これからもできる限り試合というステージに向け挑戦を続ける。