(左から村上栄二、荒木東海男、山住晶彦)
今年満60歳以上のグランド部門と、満68歳以上のゴールド部門で競われる「ドゥ・ヨネザワ企業グループカップ 関西プロゴルフグランド・ゴールドシニア選手権大会」が熊本ゴルフ倶楽部
阿蘇湯の谷コースで同時開催される。ゴールドシニアでは83歳で最年長出場の古市忠夫を始め中尾豊健(72)、友利勝良(69)、吉村金八(72)といったメンバー40名が揃う。グランドシニアは平石武則(64)、原田三夫(60)、植田浩史(65)、杉原敏一(60)といったベテランシニア52名が出場する。
3年連続で会場を提供していただいている「熊本ゴルフ倶楽部 阿蘇湯の谷コース」は1952年に開場し、熊本で一番古いゴルフ場として地元からも親しまれている。コース監修は井上誠一氏による作品で、自然の地形によるアップダウンを生かした山岳コース。距離は無いもののスコアメイクが難しいレイアウトになっているのが特徴となっている。昨年の10月に「くまもと阿蘇カントリークラブ湯の谷コース」から名称変更をした。
石井裕人競技委員長は「ティーショットの落としどころが狭く、繊細なショットが求められるコースです。自然の地形を生かしたコースは、マネジメントも非常に難しいと思いますので、最後まで油断ができない」と説明する。「外輪山に囲まれた湯の谷コースは、視界的にも自然の壮大な景観に圧倒されます。今は新緑の時期。コースコンディションも整えてくれていますし、阿蘇でプレーができることは、贅沢な気持ちにさせてくれます。球がグリーンを捉える音を味わいながら、良いゲームを目指してもらいたいです」と魅力を語った。
大会前日の14日は指定練習日ということもあり、クラブハウス前では1年振りか、それ以上の年月を経て久々の再会を果たす選手でにぎわっていた。「えらいグリーンが締まってるね。どんどん良うなってるよ!ちょうどよか」とコースの仕上がり具合を楽しそうに話している声が聞こえてきた。その声の主は、ゴールドの部で出場している吉村金八前会長だった。
吉村は「このコースは、私がゴルフに夢中になった若い時代の九州プロゴルフ会の月例研修会場でもあったので、所属していた草野くんと良くプレーした思い出のあるコース。当時はクラブハウスが劇場型というモダンな形が特に印象的でした。そんな思い出があるコースを簡単に解散してもらいたくなかった」と振り返った。
震災後約4年が経ったころゴルフ場社長から吉村に「コースが再生できるか調査してほしい」と正式に依頼があった。コースに入ってみると一面に雑草は生い茂り、あちらこちらにクラックと呼ばれる「ひび割れ」が見られた。現実を目の当たりにして悲しみもあったが「なんとかしたい」という思いに駆られた。まずできることは芝を刈り、重機を入れて土を掘り起こすことだった。そこから吉村がコース再造成の指揮を執り、いよいよ再オープンというところまでこぎつけ「大会のできるコースを目指そう」と社長のサポートもいただいて、関西グランド・ゴールドの試合開催に結び付けたのだ。
ゴールドの部に出場している地元阿蘇出身の草野忠重(68)にとっては、湯の谷コースは研修生時代からお世話になっているホームコース。吉村と一緒に研修会で腕を磨いた時期もあったという。「プロになってから長い年月が経ち、こうやってまた地元阿蘇で出場選手として戻ってこれたことは嬉しいですよ。熊本一古いコースなので、九州を代表するベテランプロゴルファーも大勢います。震災を経てコースも熟成している感じがしますね」としみじみ語った。阿蘇湯の谷育ちの草野にとっても大切な試合であることは間違いない。
グランドの部では、ディフェンディングチャンピオンの山住晶彦(60)が精力的に練習ラウンドをこなしていた。昨年大会の最終ラウンドは雨風の強まる過酷な状況で、プレーオフ2ホールを制し山住が優勝した。プロ入り35年目での初優勝に本人は夢心地だった。「昨年は60歳という節目を前にプロとして挑む最後の試合で、完走することが目標だったからね」と振り返る。
「優勝を契機にゴルフをやり込むようになったけど、なかなか体が追いつかない。日本グランドなんかもボロボロでしたね。心筋梗塞の手術をしているから心臓も一部壊死しているけど、またこうやって試合でゴルフができて仲間がいることは幸せですよ」と笑顔を見せた。身体、心が健康であるからこそ、これまでの山あり谷ありの人生を共感してくれる仲間が試合会場で待っている。
60歳の節目から新しいプロ人生がスタートした昨年の山住のように、今年も阿蘇湯の谷では青い空の下、新しい物語の誕生を期待させてくれる。