井戸木は、スタート直前まで、黙々と練習をしていた。この日は、強い風が吹き荒れていた。そんな中でも、ボールの行方よりも、自分のスイングを確認するように、ボールを打ち続けていた。
井戸木の第2ラウンドがスタートした。それは、着用するバイザーも風で飛ばされそうなくらいの強い風だった。1番、2番を連続ボギーとし、だんだんと強くなる風に、ショットのいいイメージを重ね合わせられずにいた。3番はトリプル。ショットの調子はよかったのだが、風速15メートルに太刀打ちできるショットではなかったのだ。グリーン上でも、ボールが止まらなかったりと、苦しい展開が続いた。まさに風に翻弄されて為す術もないという状態だった。結果的に、変則の2日間を第1ラウンドが72、そして第2ラウンドも翌朝のサスペンデッドを終えて78。通算6オーバーで、予選通過は叶わなかった。
先週、米チャンピオンズツアーのリージョンズトラディションに参加した後、この全米プロシニア入りをした。久々の海外連戦に、体も少し疲労がたまってきたようだ。痛めている右肩の調子が、水曜から良くない。痛みをかばいながらのプレーでは、どうしても集中力を欠いてしまう。肩を使うパッティングの微妙なタッチが合わせられなくなってしまった。
「ゴルフの調子は、悪くないんですよ。日本のような(安全な)ゴルフのマネジメントでゲームを進めてました。グリーンのセンターを狙ってたぐらいだから。そういうマネジメントでグリーンに乗っても、パッティングが決められない。頭が悪いにつきる。ゴルフはパットだからね。歴代チャンピオンとしては、自信のあるパッティングになってない。それが今回わかったということかもしれません」。肩の痛みは決して言い訳にしない。プレーに正確さが戻れば、それが成績につながることを井戸木は知っている。
だから練習に練習を重ねることが、いま自分にできる唯一の突破口だと思っている。そうやって自信につなげていきたい。第2ラウンド後、予選落ち濃厚だと認識していても、練習グリーンでパッティングを繰り返し、しばらくはグリーンを離れようとしなかった。井戸木は、ここでなにかひとつでも掴んでおきたい。何か、ひとつでも課題がクリアできたと思えば、それが自信に繋がるのだ。その確信が欲しくてたまらないという表情だった。そして日本のシニアツアーでは、ひとつでも結果を示したいと願う。