JGA主催「第32回日本シニアオープンゴルフ選手権」最終ラウンド。台風14号の影響でコースは強風が吹き抜ける中、午前8時30分に霧の為に競技一時中断したが、54分後に競技を再開。首位スタートのプラヤド・マークセン(56)が70をマークし通算12アンダー、2位に4打差をつけて日本シニアオープン優勝。2016、17、18年に次ぐ大会4勝目を飾り、シニアツアーでは通算16勝目を挙げた。8アンダー2位に藤田寛之(53)、注目のシニアルーキー宮本勝昌(50)は6位で終えた。
ナショナルオープンの決勝ラウンドは1番ホールから順に2人組でスタートするのが恒例だが、台風14号による悪天候が予想され、最終日は1、10番ホールから3人組でスタート時間が設定された。最終組は宮本勝昌(4アンダー)、藤田寛之(9アンダー)、プラヤド・マークセン(10アンダー)という注目のメンバーが揃ったが、優勝争いは実質マークセンと藤田に絞られた。
まさにマークセンのプレーぶりは「横綱」だった。3日目、藤田寛之が、マークセンのゴルフを「いってみれば横綱ですね。特に、今週のマークセンは、付け入る隙きがないです」と表現した言葉通りだった。3日目を終えて2位の藤田とは、1打差リード。最終ラウンドがスタートし、藤田が2、3番を連続ボギーと叩く。4番パー5ではマークセンがボギーとしたものの、その差は縮まらない。さらに9番パー3では藤田がボギーとし3打差をつけて。後半に入った。すかさずマークセンは、10、11番と連続バーディを奪って、5打差のリード。続く藤田は12、13番とバーディーを重ね、マークセンとの差を詰め寄ったのだった。
さらにマークセンは14番でボギーを叩き、2打差まで詰め寄った。それでもマークセンは微動だにしなかった。想定内という範囲だったからだ。「自分がボギーを打った14番ですが、池もあって難しいホールで、ボギーでも仕方ないと思っていたので、そこで気持ちが沈んだりということはなく、その後、ずっとパーで行けばいいと思っていたので、そんなに焦らず、自分にプレッシャーをかけず、普通にプレーしようと思っていました」と言ってのけた。
マークセンは戦いを振り返って「前半は、中々バーディが来ませんでしたが、藤田さんもバーディが来ていなかったので、もう自分はパープレーでいけたことは、予定通りというか、気持ち的には焦りはなかったです」と言った。優勝へのレールがあるとすれば、マークセンはこの時点でレールに乗っただろう。一方、藤田は「なんとかショットでプレッシャーをかけたい」と思いながらも、なかなか決め手がなく、マークセンの牙城を攻めきれないでいた。
「横綱」級と藤田が言った意味。自分のゴルフ、自分が描いたゲームプランとショット、精神力に揺るぎがないこと。マークセンの姿はまさにその通りだった。マークセンは16番でバーディー、最終ホールでもバーディーで締めて2位藤田に4打差をつけ、キングオブシニアの実力を知らしめた。
25歳でプロ転向したマークセンは、当時の日本ツアーで青木功が活躍していた姿を目に焼き付けて、憧れの日本で戦うことを目標にしていた。日本のレジェンドのようになりたいと、レギュラーツアーでは必死に戦ってきた。マークセンは「日本シニアオープンで4回も勝てましたが、自分の中では相当苦しい戦いでした」と振り返る。
「レジェンドの青木功さんが5度のタイトル獲得をしているということですが、本音で言えば僕の場合は4回で十分かなと(笑)。ただ5回勝つというのは、本当に大変な偉業だと思います。もし来年の大会で戦う条件が揃っているのであれば、5度目のタイトルに挑みたいです」。技術的には衰えを感じていないというマークセン。だがグリーンが読みずらいと「視力」の低下も感じている。「だんだんと年齢にかなわないところが出てくると思いますので、それは受け入れなければならない現実でもあり、これから出てくるシニアルーキーにはかなわないかもしれません」と時代の流れもひしひしと感じている。だが今回のような悪天候でも、マークセンは自分のプレースタイルを貫いて優勝を掴むことができた。プロシニア含めシニア日本タイトルを5つ保有するマークセンは、シニアツアーで大きな存在を知らしめる強敵であることは間違いない。
(チームタイ・マークセンのサポートメンバー)