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トーナメントプレーヤー

<FR>ダブルボギー発進ながら見事カムバックし、首位を死守した蛭川

2016年09月02日
16PGAプロテスト4R0780

 第1ラウンドは1オーバーと出遅れた蛭川隆は、第2ラウンドで66、第3ラウンドでは67をマークして通算8アンダーの単独首位に立った。

 第4ラウンドは最終組。緊張感はそれほどなかった。目指すは来年の日本プロゴルフ選手権の出場資格を得られる「トップ合格」あるのみ。1番パー4ホールのティーショットをフェアウエイへ確実に運んだ。ピンまで残り165ヤードの第2打。9番アイアンで打ったボールはグリーンをオーバー。フライヤーしたのだった。「170ヤードは飛びました」と蛭川は振り返る。

 寄せの第3打でグリーンを捕えられず、結局4オン2パットのダブりボギー。しかし、焦りはしなかった。そんなミスも想定内だったのだ。


 蛭川は中学2年から地元・鹿児島のティーチングプロである佐藤直輝にレッスンを本格的に教わり始めた。大学へ進学したものの、一日も早くプロ転向したい思いが募り、中退してプロゴルファーへの道を歩み出した。昨年11月にプロ転向し、今年2月からは九州サーキットに出場して試合勘を養った。目前の目標をプロテストに定め、研鑚を積み、54ホールのプロテスト第2次では通算16アンダーでトップ合格。何よりも代えがたいプロとしての自信を深めた。

hirukawa


 最終プロテスト第4ラウンドを首位で迎える。前夜、師匠で佐藤にアドバイスを求めた。「前半9ホールは準備運動でしかない。勝負は後半9ホールだ」。その言葉を胸に刻んでいただけに、スタートホールでのダブルボギーは、決して焦る理由にはならなかった。むしろ、悪いものすべてを吐き出せたような気持ちになれた。いい意味での開き直りだ。


 最終組の同組でラウンドする小浦和也との2打差は1ホールで無くなった。日本オープンでローエストアマに2年連続で輝いた実力者。だが、それはアマチュア時代での戦績でしかない。小浦とは昔から練習ラウンドをことあるごとに行うほどの仲であり、どんなプレータイプかも熟知していた。


 蛭川は4、5番ホールで2連続バーディーを奪うと、8番ホールでもバーディーパットをねじ込み、前半を1アンダーで終えることができた。ハーフターン後、12番ホールでもバーディーを奪った時点で、小浦とは3打差が着いていた。残り6ホールを無難に回れば同組では一番のスコアでフィニッシュできる。逃げ切れる。クラブハウスリーダーの通算スコアはわからない。二桁アンダーの選手はいないと試合の流れを蛭川は読んだ。


 最終ホール。またしてもパーオンを狙ったアイアンショットがフライヤーし、グリーンをダイレクトオーバー。左足下がりのラフ。ピンまで15ヤードのピンチを迎えた。

 小浦はワンピンのバーディーチャンスに着けていた。その差は3打。ショット次第では小浦にスキを与えてしまうピンチ。

「緊張はしていませんでした。痺れていませんでしたね。それよりもチップインバーディーで決着を着けようと思ってアドレスに入ってくらいですからね」

 蛭川はピンに確実に寄せ切り、小浦のバーディーパットは入らず、両選手の戦いは幕を閉じた。通算10アンダーで蛭川はフィニッシュし、スコアカード提出所で首位であることを知った。


「トップ合格できて本当に嬉しいです。出場した選手の中で、僕が誰よりもトップ合格するんだと思い続けて来たと思うんです。ようやくつかんだこのチャンス(日本プロ出場)を生かし、プロとして成長していきたいです」

 20歳のプロゴルファーが、さらに羽ばたく。トップ合格という自信を身に着けて--。