通算2アンダー・6位で最終ラウンドをスタートした石徳俊樹選手(23歳・広島CC)は、首位とは8打差があった。「追いつくにはストローク差が離れ過ぎている。昨日は2オーバーだっただけに、今日は2アンダーでスコアを取り戻すことを目標しよう」と決めた。
ボギーが先行したものの、6、9番ホールでバーディーを奪い、スコアを一つ伸ばしてバックナインに向かった。通算3アンダーで迎えた16番パー5でバーディー奪取すると、予期せぬ情報が競技委員から届けられた。最終組はスコアを落とし、首位は通算6アンダーだと聞かされた。
「残り2ホールともバーディーを奪えば、通算6アンダーになる。連続バーディーで上がってみせる」。 石徳選手のモチベーションはマックスに達した。
大学卒業後、広島CC研修生となり、4日間競技のプレーをするのは久しぶりだった。首位を争う緊張感が体中を駆け巡る。「何だか心地良かったです。僕はストロークプレーよりもマッチプレーの方が得意なので。同組の徳永(圭太)選手は5アンダーだったので、ホールマッチのつもりでプレーしたなら面白くなる。もちろん、僕が勝つ思いでプレーしました」と石徳選手は振り返る。
17番パー3ホール。ピンまで177ヤード。6番アイアンでのティーショットはグリーンを捕らえたが、ピンまで7メートルの距離。下りのスライスラインのパットを放り込み、バーディー奪取。徳永選手と同じく通算5アンダーとなった。
最終18番パー4ホール。ドライバーショットはフェアウエイ右サイドのファーストカットに止まった。ピンまで187ヤード。左からのフォロー風が吹いている。一方の徳永選手はティーショットをミスし、2打目を花道に運んでいた。
前ホール同様に6番アイアンを選択し、放った2打目はピン手前6メートルに乗った。上りのスネークライン。「最終組は7アンダーにはスコアを伸ばしているに違いない。悔いの残らないパットを打とう。ショートだけはしない、オーバーさせるぞ」。そう決心して挑んだバーディーパット。真芯で捕らえた感触が手から伝わって来た。ボールはカップに吸い込まれるようにして、消えた。上がり3ホールで3連続バーディー。その結果に満足し、仮想のマッチプレーに勝利したことで拳を握り、何度も何度も天に向かって突き上げた。
通算6アンダーでのクラブハウスリーダー。最終組の芦沢宗臣、松原大輔、永澤翔選手ともにバーディーを奪えず、通算5アンダーに終わり、石徳選手のトップ合格が決まった。8打差の大逆転劇を演じ、来年の日本プロゴルフ選手権出場資格も手に入れた。
「4日間、アンダーパースコアをマークするくらいでなければ、5年後10年後もツアープロとして戦えない。それほど厳しい(ツアープロの)世界に飛び込んだと思っています。でも、来年の仕事場が一つ決まったのは本当に嬉しいです。トップ合格に浮かれず、明日からまた気持ちを切り替え、頑張って行きます。よろしく願います」。
勝って驕らず、兜の緒を締める。勝者しての石徳選手の笑みは、この日限りなのかも知れない。しかし、それでも「勝った」喜びは自信に変えて、また新たに歩み出す。その繰り返しがトーナメントプレーヤーの道に違いない。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)