73・72と安定したプレーで迎えた第3ラウンド。雨も風も強まり、難攻不落とされる片山津GCが牙を剥き出し、選手たちはスコアメイクに苦しめられた。北山大雄選手(22歳・船橋CC)も79の大崩れを喫している。だが、他の選手たちとは内容が違った。
「悪天候でコースコンディションが厳しくなったにもかかわらず、同組の他の3選手が好スコアを出していました。それに焦りを覚えてしまって…」。自分のゴルフを見失い、スイングも乱れての大叩きだったのだ。コースではなく、自分に負けての順位後退だった。 北山選手は、女子プロゴルファーの母・北山孝子さんから本格的にゴルフを教わり出したのは15歳。高校1年生の時だった。ゴルファーのサラブレットらしく、すぐに頭角を現す。母子家族もあって一日にも早くプロ転向し、活躍し、親孝行をしたい。その一心で練習を積み重ねて来た。高校時代からJGTOツアーのクォリファイングトーナメント(QT)を受験するも、3度のセカンドQT落ち、2度のサードQT落ちに終わった。
この資格認定プロテストも3回目の受験、最終プロテストは今回初めての出場。22歳となって、いつまでも研修生ではいられない。崖っぷちの思いで、船橋CC研修生の先輩である市原弘章とともに片山津GCへ乗り込んだ。
「一緒に合格しよう」。
先週の土曜日にはパワースポットの東尋坊に出掛け、その思いを強めた。
最終ラウンド。前日のゴルフを頭の中から拭い去り、イーブンパーで回った第2ラウンドのプレーを再現しようと決め、スタートティーに向かった。前半2ボギーが先行したものの、9番ホールでバーディーを奪ってハーフターン。11番ホールでのバーディーでイーブンパーに戻す。だが、13番ホールでティーショットがバンカーに突き刺さり、ダブルボギーを叩いてしまう。自分に言い聞かせた。
「攻めるしかない」。
攻撃は最大の防御なり。積極的なプレーを展開し16、17番ホールで連続バーディーを奪取。イーブンパーでフィニッシュし、通算9オーバー・32位タイに食い込み、市原選手(通算11オーバー・44位タイ)とともに合格を果たしたのだった。
「次の目標はQTを突破し、ファイナルQTで35位以内(ツアー前半戦に出場できる優先出場順位)に入ることです」。力強く答える息子の傍らで、LPGA会員の母親の孝子さんは嬉し涙を流し続けていた。親孝行のスタートラインに立った北山選手が、どこか男らしく見えた。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)