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ハン・リー(38=米国)が、コース新記録9アンダー63をマークして、涙した。9バーディー、ボギーなしのラウンド後、今の気持ちを聞かれたが、うつむいたまましばらく声が出ず、嗚咽がもれた。ようやく顔を上げて「またゴルフができるようになるとは思っていなかった。ひざの手術をして、また愛するゴルフができる。うれしい」とすすり上げながら話した。
2014年12月に左ひざを手術した。高校時代にバスケットボールをやっていたころのけがが、ゴルフのスイングや日本での生活、正座などで徐々に悪化。手術前最後となった同年カシオでは「テーピングでぐるぐる巻きにしていたのでドライバーは220ヤードも飛ばなかった」という。手術後、3カ月は「カウチに座って過ごした」と、歩けなかった。
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2015年4月にトレーニングを開始したが、9月に今度は右足を痛め、クラブを握ったのは11月になった。出場資格を失っていたが、JGTOが公傷を適用して4月からツアーに復帰。「こうやって戻ってくる場所を与えてくれたJGTOに感謝しています」という。東建で復帰したときには「選手たちが『お帰りなさい』といってくれた。ギャラリーも言ってくれた。びっくりでしょ」と、ここは日本語で感激を表した。この大会も出場資格はなかったが、JGTOとの流れがあって特別承認で出場。初日武藤、この日藤本が出したコース記録64を破る快挙を引き出した。
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この日のバーディーラッシュは2番から始まった。3メートルを沈めた後、3番5メートル、5番4メートル、6番では「今日のベストショット」というバンカー上の難しいピンをせめて3メートルにつけた。8番ではOKに寄せ、9番で4メートルと「パッティングがすごくよかった」と、アウトを30。インも10番OK、12番4メートル、16番5メートルと、言葉通りパッティングが冴え渡った。手術前までコンビを組んでいたキャディーの月森洋二さんと、この日からコンビが復活できた。「1勝(2012年マイナビ)したときのキャディーさん。一緒ににやれるだけでうれしかった」というのも、結果に結びついたようだ。
一気に通算9アンダーで4位に浮上した。首位とは7打差ある。「高いレベルのゴルフができてうれしい。今は今日のプレーが出来たことへの感謝とうれしさで頭がいっぱい。明日はまた別の日。また頑張りたい」と、興奮はいつまでも冷めなかった。