優勝者スピーチと、協会会長あいさつを表彰式で同時に言えるのは、この人ぐらいしかしないだろう。
倉本昌弘(61)が、通算15アンダー、2位に7打差をつける圧倒的な強さで、今季初勝利を最終戦でつかんだ。「今日はやらない(中止)と思って、ジャケットで来た(笑い)。悪天候の時は私が勝つ、と思っていました」と勝利者スピーチ。そしてこの日も雨の中を714人のギャラリー(3日間約2800人)が足を運んでくれたことや、コースをプレーできる状態にした大会、コース関係者にPGA会長としてお礼を述べた。
土砂降りの雨で、2時間の中断。日没を想定してぎりぎりとなる時間に、2位に2打差の首位でスタートした。いきなり1番で左のラフに入れたが、そこからピン左3メートルにつけてバーディー発進。2番では左5メートルのバーディーパットが入った。他の選手が悪天候、水をたっぷり含んだコース状況に苦しむ中「雨は僕に有利と思った。こうした天気の中では、僕が一番強いと思っているので。中嶋さんも上がって来たように、実力、技術がある人間が出てくる」と、確かな自信もあった。
8番パー5ではOKにつけ、10番では10メートル近いバーディーを決めた。12番でもOKに寄せるなど「今日はアイアンショットの距離感がよかった」と振り返った。優勝確実の最終18番では約10メートルのパットを入れてバンザイ。雨の中を待っていたギャラリーに応えた。
「今年はずっと調子が悪かった。すべてのうっ憤を晴らすストローク差で勝てた」と笑顔をみせ「初日と今日がノーボギー。3日間でボギーは2つだった。このコースは間違いなく、僕に合っている。みんなが嫌なところが、僕は嫌じゃないから」と話した。そして「この大会は2年前に最終日が雨で中止になっての優勝している。大会2度目の優勝も雨で中止になってしまっては、天の責任とはいえ、すっきりはしない。中止を決めるのは私ではないが、結果的に競技をやれてよかった」と振り返った。
なにより、無事1年間のツアーが終了したことの方が満足。「今年は17試合できたこと。優勝よりもそっちの方がよかった」と、PGA会長の顔に。「みんなが協力してくれて、いい雰囲気でシニアツアーはできている。でも楽観はしていない。いつ試合が減っても仕方がないと思っている。スポンサーの意向を聞きながら、長くやってもらえる状況を作っていく」という。そのためには?「これから若い選手が入ってくると、いまの雰囲気にはならないかもしれない。まずは最初の教育です」とし「米山(剛)、鈴木(亨)とか若い選手が勝ってくれること。今年は飯合さんも勝ったけど、中嶋さん、(尾崎)直道君、60歳以上の選手はまだまだ老け込む年ではない。60代が勝ったりしながら、若手が賞金王になっていくという図式が1番いいんじゃないかと思う」。来年もシニアとしての試合の魅力を見せていくことの大切になる。
(オフィシャルライター・赤坂厚)