まさに「進撃の巨人」。
191センチのピーター・ファウラー(57=オーストラリア)が、序盤からぐんぐんとスコアを伸ばす。6アンダー6位からスタート。1番で1メートル、2番パー3では6番アイアンで30センチにつける連続バーディー発進から始まった。5番パー3で6メートルを入れて首位9アンダーに並ぶ。圧巻は7番で1・2メートルを入れてから。1組前を回る田村尚之が5番から6連続バーディーで抜け出していったが、ファウラーも負けじとそこから11番まで6連続バーディーで追いかけて、2人が混戦の集団を抜け出した。
そこからも止まらない。14番で5メートルを入れて16アンダーとしたとき、田村が15番でボギーをたたいて14アンダーに後退。2打差がついて、勝負がほぼ見えた。17、18番もバーディーフィニッシュ。積み上げたバーディー数は11個。61という驚異的なスコアをたたき出して、通算18アンダー、終わってみればぶっちぎりの大まくりだった。
「ベーリー、ベーリー、ハッピー」という第一声は当然か。とにかく、気持ちよくプレーした。ほとんどミスもなく。「こういう展開は予想していなかった」と、本人もびっくりの「進撃」だった。
先週、次女ケイトさん(27)の娘の1歳の誕生日だった。日本から戻り、孫娘の誕生日を祝った後、オーストラリアのレギュラーツアー「ニューサウスウエールズ・オープン」に出場。2日目に9アンダーで回るなど通算13アンダーの28位だったが、ゴルフの調子は「良かった」という。
45年間、メンタルコーチを務めている81歳のイアン・アレクサンダーさんからは、再び日本に来る前に「頭を動かさないで、シンプルにスイング、パッティングをすること」とアドバイスされてきた。それを守って、日本シニアツアー初優勝につなげた。
オーストラリアでは試合数が少ないため「欧州、米国、アジア、日本など世界を旅しながら試合に出る。私には合っている」という。1989年W杯で団体、個人を制し、欧州ツアー1勝、欧州シニアツアー5勝のほか、ニュージーランドやシンガポールでも優勝歴がある。今季も全米プロシニア、全英シニアオープンなどに出場した。「日本の試合には、出るたびに面白くて、興味深く感じる」という。特に、富士フイルムで「青木(功)さんともプレーできた」というのが、印象に残っている様子。優勝トロフィーの兜にも興味津々だった。
11バーディーを奪ったグリーン上。パッティングのラインを読む際に、右足を引き、左ひざを曲げて背筋を伸ばしてラインを読む。「私は背が高いので、ゴルフをプレーすると体のどこかに負担がかかる。9年前に膝を悪くしました。右ひざを2回、左ひざを3回手術しているので、両膝を曲げてラインを読むことはできないんです。腰も悪いので、(プレーの)途中でどこかに寄りかかって休む必要もある」と、故障を抱えてのプレーだが、この日はそんなところをみじんも感じさせなかった。
1男3女の子供の中で、ニューヨークでモデルをやっている3女のジョージアさん(24)が、米国ではトップモデルの証で、日本でも人気のミランダ・カーらを輩出している下着メーカー「ヴィクトリア・シークレット」のモデルに抜擢された。「努力をしている娘を尊敬している。誇りに思います」と、最後には父親の顔になった。
(オフィシャルライター・赤坂厚)