NEWS
シニアツアー

<福岡シニア・FR>有言実行の水巻は、5年ぶりのシニアツアー通算2勝目で大きな笑顔

2016年11月10日

9番ホール、打ち上げの344ヤード・パー4。最終組の2組前で回る水巻善典と崎山武志は通算3アンダーにスコアを伸ばしていた。崎山はピン左手前5メートルのバーディーチャンスに着ける。水巻はグリーン右手前バンカーに打ち込んでしまう。

「バンカーを均した跡にボールが止まり、3分の1ほど沈んだライでした」と水巻。意図的にダフらせて打ち出すつもりだったが、結果はホームランとなり、ピン奥8メートルにボールは何とか止まってくれた。

 下りのフックラインのパーパット。ボールは最後のひと転がりでカップインした。崎山のバーディーパットはカップをわずかに反れて、水巻と同じくパーに終わった。

「あの難しいパーパットを水巻さんはうまく沈めましたよね。パットがとにかく良かった。1メートルほどのバーディーパットを外してもいましたが、とにかく良いパットを入れていました」と崎山をしてそう言わしめるパットが水巻の会心ゴルフを支えていたのだ。

 最終組で首位スタートの高見和宏は通算5アンダーで9番ホールを迎えた。水巻と同じバンカーからの3打目をカップ手前1メートルに寄せた。しかし、そのパーパットは、ボールがカップの縁を1周して外れてしまう。髙見は1打落とし、通算4アンダーでバックナインに向かったのだった。

 水巻の快進撃は後半も続く。11、12、17番ホールでバーディーを奪い、6バーディー・1ボギー67をマーク。通算6アンダーでクラブハウスリーダ―となり、後続2組のホールアウトを待った。

 10番ホールでバーディーを奪った髙見が通算5アンダーで最終18番グリーンに上がって来た。グリーン奥カラーからのバーディーパットはピンまで5メートル。「打ち出しからボールがラインを外れてしまった」と髙見。バーディーパットをねじ込めなかった瞬間、水巻の5年ぶりのシニアツアー通算2勝目が決まった。

 前試合の富士フイルムシニア選手権終了時点で、水巻の賞金ランク順位は35位。来季の同シード権を得るには同30位以内に入らなければならない。賞金シード圏外順位だったことで、水巻は来季のシニアツアー出場優先順位を決めるクォリファイングトーナメント(QT)に出場しなければならない状況だった。その締め切りが迫り、申し込み書に記入する際、水巻は試合会場をあえて選択しなかった。

「大丈夫、来週(福岡シニアで)優勝するから」とQT担当者にそう告げていたのだ。有言実行。水巻は優勝したことでシード権を獲得し、賞金ランクは16位にジャンプアップした。

 シニア入り後は、夫婦でツアー転戦し、レギュラー時代と違って、歯を食いしばってガツガツプレーをするわけでもなくなった。ゴルフを楽しむことを優先するようなったという。それでも、1カ月前からはQTへ行きたくない思いがさすがに強まり、日が暮れるまで練習するようになったり、使用クラブにもこだわったりするように変わった。セブンヒルズカップ14位タイ、富士フイルムシニア選手権4位タイと成績も上がり始めて迎えたのがこの福岡シニアだったのだ。

「先週(富士フイルム)もグリーンが速かったし、今週も速かったことで集中してプレーができました。高速グリーンでは3パットしないことが大事ですからね。カップインするまで集中したことが結果につながりました。識が強くて(スコアが)伸びなかったことで、(優勝は)運が良かったからだと思います」と水巻。

 日程の関係から、今週に限って「優勝しないから留守番して」と奥さんを家に残し、試合会場に居なかったことを悔やんだ。

 来年1月には初孫が誕生する。次は優勝カップを前に、孫を抱いての記念撮影。「優勝すると喜んでくれる人が多いのは、本当に嬉しい」。5年ぶりの勝利のスマイル。レギュラー時代とは違った柔和な、好々爺の笑顔に見えた。

(PGAオフィシャルライター M・DEN)