練習場で百球よりも試合での一球。崎山武志の練習量の豊富さは、シニアツアー界で屈指だ。練習は嘘をつかない。
崎山にとっては、練習でイメージ通りのショットをたとえどんなに打てるようになっても、試合で打てるようにならなければ意味がない。そのためにも、試合で納得できる一球をまずは打ちたい。その思いを抱いて2カ月もの月日が流れていた。
シニアツアー中盤までは2勝を挙げ、プラヤド・マークセンと賞金王争いを演じていた。だが、9月上旬のコマツオープン7位を最後に、ショットの不振に陥り出したのだった。メジャー大会の日本シニアオープンは28位タイ、続く日本プロシニア選手権では予選落ちを喫した。
一方のマークセンはコマツオープンから日本プロシニア選手権と3連勝を飾り、シニア賞金王タイトルを確定させた。
「またしてもシニア賞金王のタイトルを逃してしまった」。その落胆さと比例するかのようにショットの調子は落ちた。それでも崎山は練習し続けた。ようやくその成果が出始める。富士フイルムシニア選手権で7位タイに入り、そして福岡シニアオープンを迎えたのだ。
「戦略性の高いホールが多く、ドライバーショットを左右に曲げたらスコアを作れない。ティーショットでレイアップを優先する選手が少なくありませんが、僕はあえてドライバーを手にしました。フェアウエイを捕らえ続けられたのは、自信回復につながります」
大会初日は3バーディー・2ボギーの1アンダー・7位タイ。同最終日は1イーグル・6バーディー・4ボギー68でフィニッシュ。通算5アンダーで2位タイまで駆け上った。
最終日は優勝した水巻善典と同組でのラウンド。
「スタートから2連続ボギーでしたが、大事に行きたい思いと良いスコアを出したい思いが交差し、中途半端なパットをしてのスコアでした。守る攻めるをはっきり決めてから打つようにしてから、すぐにイーグルを取れたのが大きかったですね。勇気を持ってドライバーショットを打ち続けてショットの不安を払拭でき始めました。水巻さんも良いゴルフをしていたので、水巻さんに抜かれなければと思っていましたが、僕がスコアを落としてしまいました」
それでも17、18番ホールでの連続バーディー奪取で水巻にあと一打まで迫ったプレーは、ギャラリーを喜ばせた。
「優勝は残り2試合に取っておきますよ」と崎山は、2位タイの成績結果よりも練習場の成果をコースで出せたことに目を細めていた。