大会初日6バーディー・2ボギーの4アンダーをマークし、2位の好位置に着けたのは加藤仁だ。この日の最多バーディー奪取。その内訳は見事の一言に尽きる。インスタートで11番ホールは4メートル、13番2メートル、18番ホール80センチ、2番ホール2メートル、4番ホール2メートル、6番ホール80センチ。ショットの切れがバーディーの大量生産の最大要因だ。
前日、ラウンド後にクラブハウス前の練習グリーンでじゃ間を忘れるほどアプローチ練習をしていた。
気が付くと初見充宣がすぐ後ろに立っていた。「一時間近くもそんな同じ構えで打っているんだよ、それじゃ、ダメだよ」という声を掛けてきた。熱心に練習している加藤の姿を初見は目にし、イメージしたショットをうまく打てていない原因を見抜いていたのだ。
「ハンドダウンに構えすぎている。もっとグリップ位置を高くして構えてごらんよ」
初見に促されてハンドアップの構えからショットしてみると打ち出し方向も狙った落とし所にも打てた。ショットが蘇った。その感覚をアプローチだけでなくウッドやアイアンショットでも生かしてみた。この一年にショット不振が一気に消え去った。
「ハンドアップの構えは、今までとは違うのでグリップに違和感があります。でもそれが新鮮なんですよ。この新鮮さを失わないように、明日も18ホール続けて行きます。お礼に初見さんに夕飯を奢らないといけませんね」
初見がこの日、11月9日が64歳の誕生日であることをスタッフに知らされると「夕飯では足りませんね。どんな誕生日プレゼントを送ったらいいかな?」と首を傾げた。
ワンヒントアドバイスで加藤がシニア初優勝。こんなビッグな誕生日プレゼントはどこを探してもない!「グリップ違和感の賞味期限が切れないうちに結果を出したいんです」と加藤はホールアウト後、すぐにパッティンググリーンで前日同様にアプローチショット練習を繰り返していた。