歓声とため息。ギャラリーにとっても、青木功(74)にとっても、そんな1日だった。
それは2番から始まった。グリーン奥にこぼしたが、約20ヤードをチップインバーディー。ギャラリーのどよめきに、おどけるポーズをみせた。続く3番では縦長の2段グリーンの下の段に。30メートル以上のパットは打ち切れずに段を上れず、また下の段に戻ってしまい、ギャラリーからため息。そのパットも3メートルほどショートして3パットのボギーにした。4番パー4。第1打がピンに向かい、転がってカップに向かう。「入れ!」の掛け声がかかったが、左カップにけられて上4メートルへ。「ピンに当たりゃ、入ったかもなあ。下りのパットは厳しいよ」と、1メートル強オーバーし、連続3パット。歓声とため息が交互に出る。それも、今の青木のゴルフだった。
アウトを2オーバーで折り返し、10番ボギーの後、12、13番連続バーディーで1オーバーに。エージシュート(74以下)も視野に入ってきてギャラリーの期待も高まる。「1ホール、余計なことをやっちゃうんだよ」と悔やんだのが15番だった。前の14番をチップインのボギーで切り抜けて「ホッとした訳じゃないけど、よし、次っていう気持ちの切り替えがないんだな。かかと(ヒール)にあたってOBだもんな」と、15番第1打を右にOBのダブルボギーにした。「OBすると歩くもの嫌になるよ」と、続く16番でもボギーで、エージシュート達成が難しくなった。それでも最終18番、多くのギャラリーが見つめる中でバーディーフィニッシュ。4オーバー76は、いいところも、悪いところも全部吐き出した感じの1日の結果だった。
日本シニアオープンで予選落ちして以来、今季2度目の試合。楽しかったのでは?「楽しいなんてもんじゃないよ。青いの(芝)を見ているだけで楽しい。今日1日ゴルフをやって、ゴルフ場に立てたってことがうれしいよ」と笑う。3月に日本ゴルフツアー機構(JGTO)の会長になり、会議やあいさつ回りなどに追われて、これまでとは全く違う世界で違う「仕事」をしている。ストレスもたまる。大会名誉会長で、JGTO副会長として青木を見てきた松井功も「最初のころはかなりやせた。ストレスだろうね」という。この大会でもスタートの選手紹介アナウンスでは「JGTO会長」の肩書は入れていない。あくまで「選手青木功」として、この舞台に立っている。
今大会のホストプロ。「コースコンディションはいいし、やったらやったで結果が出るから、ミスがなくなればいいなと思う。あと2日間、いい結果が出るようにね。アンダーパー、出るんじゃないかと思うんだけどなあ」。今季3ラウンド目だが、いろいろなことをコースでやってきた。あと2日、言葉通りのアンダーパー、期待してみよう。
(オフィシャルライター・赤坂厚)